世界有数の天然ガス産出国であるカタールは、潤沢な財源を背景に国際社会での存在感を一段と高めている。近年、液化天然ガス(LNG)の増産計画を進めており、国際ガス市場における影響力の強化を図っている。
こうした中、現在のガザ危機をめぐっては仲介役を担い、中東情勢の安定化にも尽力してきた。さらに、アフリカ情勢においても仲介外交を積極的に展開するなど、カタールはアフリカへの関与と進出を加速させている。
天然ガス産業におけるカタールの強み
カタールでは、石油開発が独立以前の1930年代から進められていた一方、ガス田開発は独立年の71年以後に開始された。同年に発見された世界最大級の「ノースフィールド(NF)・ガス田(別名ノースドーム・ガス田)」は、カタール半島北部ラアス・ラファーンの沖合に位置し、イラン領内の「サウスパールス・ガス田」と隣接する。
ガス田開発が本格化したのは、90年代に入ってからである。95年、新首長に即位したハマド前首長(在位期間:95~2013年)は、油価低迷で厳しい財政事情を抱える中、200億ドルの大規模投資を行い、LNG生産施設の建設事業を推進した。
97年にNFガス田で生産されたLNGを初輸出。以降、中国などでLNG需要が高まったことで、カタールはガス供給国としての地位を確立した。
24年、カタールのガス生産量は世界第6位の約180BCM(10億立方メートル)を記録(出所:Energy Institute)。ガス埋蔵量(20年末時)はロシアとイランに次ぐ、第3位の推定2万4000 BCMで、可採年数(R/P)は144年であるため、カタールは将来的にも産ガス国としての大きなポテンシャルを有している。
カタールの産ガス国としての特徴は、ガス輸出量である。カタールはアジアや欧州、他中東諸国にLNGを輸出している他、アラブ首長国連邦(UAE)やオマーンには「ドルフィン・ガスパイプライン」経由でガスを供給している。24年のLNG輸出量は、米国やオーストラリアに次ぐ、7820万トンを記録した(出所:GIIGNL)。
カタールが高水準の輸出量を維持することができる背景には、(1)石油生産よりもガス生産に注力していること、(2)国内ガス消費が相対的に少ないこと、がある。
