2025年12月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月18日

 Economist誌11月22日号は、ムハンマド・サウジアラビア皇太子の訪米はサウジアラビア側にとり大成功だったが、原子力協力、1兆ドルの対米投資など詳細を詰めなければならないことがある、また、トランプ大統領はイスラエルとの国交樹立を求めたが、ガザの衝突のお陰で皇太子は、その要求を逸らした、とする解説記事を掲載している。要旨は次の通り。

(ロイター/アフロ)

 ムハンマド・サウジアラビア皇太子の訪米は、サウジアラビア側にとっては大成功だった。トランプ大統領とムハンマド皇太子は、投資、武器輸出、原子力協力について署名し、トランプ大統領はサウジアラビアを主要な非北大西洋条約機構(NATO)加盟の同盟国だと宣言した。10年間にわたる両国の緊張した関係は、再び強固な関係となった。

 しかし、この訪米をより詳細に見てみるとサウジアラビア側には二つの大きな問題が残っている。つまり、これから合意の詳細を気まぐれなトランプ政権と詰めなければならないし、今後、サウジアラビアとイスラエルとの関係正常化に対する圧力が高まるだろう。

 まず、原子力協力に関する合意だが、協力実現のためには両国が原子力協定を結ぶ必要がある。それには議会の承認が必要だが、多くの米議員達は、核兵器の不拡散の見地からウランの濃縮を放棄することを求めている。

 次に、F-35戦闘機の売却は、何年もかかる問題だ。まず、売却のためには議会の承認が必要であり、民主・共和の両党の議員達は、そのことがイスラエルの軍事的優位性に与える影響について懸念している。議会が承認しても、10年以内に引き渡されることはないであろう。

 他方、今回の訪米が、2018年にサウジアラビアの反体制派ジャーナリストのカショギ氏がイスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺害された事件で何年も悪化していた米・サウジ関係の修復が目的だとすれば成功だった。また、ここ数年、サウジアラビアの対外政策はより現実的となっている。カタールをボイコットし、レバノンの首相を監禁したのは過去の出来事となっている。


新着記事

»もっと見る