2025年12月12日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年12月12日

 ワシントン・ポスト紙の11月15日付け社説‘America’s missing Iran strategy’が、イランの核問題を解決するためには、軍事力と経済制裁という圧力をイランに加えつつ、対話により解決する以外にない、と述べている。要旨は以下の通り。

(Rainer Puster/paseven/gettyimages・)

 今夏、トランプ大統領が3カ所のイラン核施設を空爆したのは、アメリカの敵対国に対して米国の抑止力を示す有益なメッセージだったが、最近の情勢は、軍事力の行使ではイランの核兵器保有への動きを永続的に終わらせることはできないことを明らかにした。

 最近の国際原子力機関(IAEA)の報告書は、問題の難しさを示している。イラン側は、米国とイスラエルの空爆による核施設へのダメージを評価するためのIAEAの査察官の査察を拒否し、60%の高濃縮ウランの残量をIAEAに説明することを拒否している。衛星画像の分析は、空爆されたナタンズのウラン濃縮施設から1マイル離れたピックアックス山の新たなウラン濃縮施設で新たな建設活動が行われていることを示唆する。

 このようなイランの好戦的な態度は、米国の敵対勢力が中東において常に協力し合うチャンスを狙っていることを示している。ロシアは、ウクライナの泥沼に嵌まっているが、中国はイランに対する関与を強めている。

 イラン側は原油とバーターで地対空ミサイル、長距離監視レーダー、そして戦闘機を入手したいと考えている。このような武器が供与されれば、域内の不安定化は増大するが、脆弱化しているイラン政府の基盤を強化させるだろう。

 米・イラン間では5回の協議が行われたが、米国がイランを空爆して以来、協議は中断したままだ。さらに「イラン核合意(JCPOA)」は失効してしまい、イランの指導者達は、最早、JCPOAには縛られないと広言している。


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