6月の空爆を受けて米・イラン交渉は中断しているが、空爆前、米側が、「ペルシャ湾岸諸国で原子力協力に関するコンソーシアムを結成し、そのコンソーシアムがイランを含め域内諸国のウラン濃縮を行う」という提案をし、これに対してイラン側が「濃縮施設がイラン国内に設置されるならば検討の余地がある」と答えたとの報道があった。
イラン側の交渉担当者レベルでは、「ウラン濃縮は諦めない」というイラン側の面子を保てる妥協案と考えたと思われる。もちろん、既に核武装に舵を切ってしまっている場合や、最高指導者がこの妥協案を受け入れず、上手く行かない可能性も高いが、追求する価値はあるのではないかと思われる。
サウジ・ムハンマド皇太子の訪米
11月18、19日、サウジアラビアのムハンマド皇太子が訪米し、F-35戦闘機の取得や「戦略的防衛協定」の締結、さらに「民生用原子力協力の交渉完了に関する共同宣言」等が行われた。最後の原子力協力に関する共同宣言の具体的内容は現時点で不明だが、長年、サウジアラビアも独自のウラン濃縮能力を主張し、米国との原子力協力が進まなかった経緯がある。
その可能性は低いが、今回、トランプ大統領がサウジアラビアに独自のウラン濃縮能力を認めてしまっていた場合、イラン側のウラン濃縮に対する米国の不平等な取り扱いに対する反発は大きく、交渉による解決はますます困難になろう。他方、サウジアラビアもペルシャ湾岸諸国のコンソーシアムによるウラン濃縮に同意していれば、このアイディアをイラン側に呑ませる追い風となろう。

