フィナンシャル・タイムズ紙が、国際原子力機関(IAEA)は高濃度の濃縮ウランが6月に攻撃された施設にまだ存在すると考えており、当該施設への査察再開を強く求めているが、イラン側は拒否している、とする解説記事を11月5日付けで掲載している。要旨は次の通り。
グロッシIAEA事務局長はFT紙に対して、西側諸国との緊張を緩和するために同機関の査察官への協力を真剣に改善するようイランに警告したと述べた。
6月に起きたイスラエルとイランの衝突後、IAEAはおおよそ10数回の査察を行ったが、イスラエルと米軍に空爆されたフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの重要な核施設へのアクセスが認められていない。これらの核施設は空爆で大きな損害を被っているが、核兵器級に近い高濃度の濃縮ウランがどうなったかが不明であり、これらの核施設に対する査察を再開する必要性が高まっていると述べた。
IAEA事務局長はイラン側と難しい交渉を続けているが、イラン側は受け入れていない。代わりにIAEAは、これらの核施設については偵察衛星による画像に依存している。
グロッシ事務局長は、現状はIAEAが国連安保理に対してイランへの査察が中断していると報告するまでには至ってはいないが、イランは真剣に協力を再開する必要があると述べた。他方、イラン側は、6月のイスラエルによるイラン空爆の1日前にIAEAが出したイランが核拡散防止条約(NPT)の義務を守っていないという非難決議がこの空爆の口実となった、と非難している。
外交官と専門家は、イランが保有する高濃度の濃縮ウランに対して適切な対応がなされず、また、米国とイランの間でイランの核開発問題解決ための交渉が再開されなければ、再度、イスラエルがイランを空爆するのではないかと懸念している。
9月にグロッシ事務局長がイランを訪問した後、イラン側は、IAEAの査察を部分的に認めた。しかし、同月後半、欧州諸国が、イランがIAEAと協力していない事等を理由に国連の対イラン制裁を再開させるスナップ・バックを発動しようとするとイラン側は激怒した。
