ニューヨークタイムズ紙は、「イランはブシェール原発への査察を認めたが、肝心の3箇所のウラン濃縮施設への査察を認めていない。他方、英、仏、独は、イランが査察を認めないなら制裁を再開するとイランに圧力を加えている」とする解説記事を8月27日付で掲載している。要旨は次の通り。
国際原子力機関(IAEA)が、イランがIAEAとの協力を停止して以来、初めてイランのブシェールにある原発に査察チームを派遣したことは、今後、IAEAによるイランの核開発に対する監視が再開するきっかけとなり得る。他方、英仏独の3カ国は、今年の10月18日に失効する2015年のイラン核合意(JCPOA)再交渉への道筋が見えなければ、8月末により広範囲な制裁を行う旨を警告している。
イスラエルと米国は、イランが核武装するのを阻止するためにイランを攻撃したと主張しているが、6月の12日間戦争以来、イランとIAEA、西側諸国との緊張が高まっている。しかし、12日間戦争後もIAEA側はイラン側と査察の再開についての交渉を続け、今回のブシェール原発の査察に繋がった。
イラン側は、同国の核開発は平和利用目的だと繰り返しており、IAEAもイランが核武装を進めている証拠はないとしているが、イランは、平和利用目的には必要のない約400キロの高濃度の濃縮ウランを備蓄している。12日間戦争の後、イランがIAEAの査察を拒否したことは、国際社会がイランの核開発を監視出来なくなるという懸念を抱かせていた。
グロッシーIAEA事務局長は、イランは米国が空爆した3つの核施設への査察を認める義務があると発言しているが、技術的な面での協議が続いている。仮にこれらの施設が空爆により陥没していれば、イラン側は、査察チームが査察できるように陥没した施設を掘り起こす義務はなく、査察できるかどうかは確かではない。ただし、グロッシー事務局長は、十分なアクセスが確保できなくても核物質を探知出来る機材があるとしている。
