さらに、専門家が疑うようにイラン側が今回の「12日間戦争」の惨敗で核武装に舵を切ってしまっており、高濃度の濃縮ウランを流用していて査察を受け入れられない状況になっている可能性もある。
安保理決議は機能しない
このように考えるとイランが、「国連の制裁が再開されても構わない」と開き直る可能性が高いのではないか。現在の国際情勢は、2015年にJCPOAが結ばれた時と大きく異なってしまっている。
特にロシアのウクライナ侵攻が続き、トランプ第2期政権の数々の国際的ルール無視が横行する中で、国際合意の信頼性が著しく損なわれている。例えば、国連安保理決議に基づく対イラン制裁が再開されれば、イラン産原油の最大輸入国である中国は国連加盟国としてイラン産原油の購入を中止する義務があるが、恐らく輸入を続けるのではないだろうか。
もちろん、これは安保理決議違反だが、中国は、それを審議する安保理の常任理事国で拒否権を有しているのでロシアのウクライナ侵攻と同様に安保理には何もできないことは目に見えている。かくして、英仏独が働きかけ、さらに米国も支持している「スナップ・バック」は、安保理決議がますます無意味な存在となってしまっていることを露呈させてしまう、「やぶ蛇」になる可能性が高いのではないかと懸念される。
そして、その間にもイスラエルの対イラン攻撃が再開される可能性も否定されないので、今後ともイラン情勢の緊張は続くことになるだろう。

