しかし、これはサウジアラビア防衛のために軍事介入しないのなら日本防衛のためにも軍事介入しないという理屈にも繋がることであり、日米安保条約の信頼性を損なう可能性があった。この件については引き続き注意深いフォローが必要だと思われる。
F-35の供与についてイスラエルが強硬な反対をしなかったと理由の一つとして、実際の供与は10年以上先になるのでその間の中東でのイスラエルの空軍力の優位は揺るがないという説明は成り立ち得よう。ただ、この記事が書いている通り、やはり、ガザの衝突の結果、イスラエルの米国への影響力が低下しているという点がより決定的なのかも知れない。
懸念は続くイスラエルとの関係
原子力協力の件も、サウジアラビア側が独自のウラン濃縮技術獲得を譲らず、引き続き、原子力協定について協議を続けることになったことも重要だ。実は、原子力協定については、ウラン濃縮を認めるかどうかで米・サウジアラビア間で10年以上協議が続いている。
ムハンマド・サウジアラビア皇太子は、「イランが核武装するならサウジアラビアも核武装する」と何回も広言しており、そういう国に核武装に繋がるウラン濃縮技術の獲得を認めるのはどうかと思うが、後先を考えないトランプ大統領のことなので、核兵器の不拡散の見地からこの点をフォローすることが必要だと思われる。
トランプ大統領が、ムハンマド皇太子にイスラエルの国家承認を迫ったが、同皇太子が、「パレスチナ国家樹立の道筋を明確化する必要がある」と切り返し、トランプ大統領が降りたことも興味深い。やはり、ガザの衝突でイスラエルの影響力が大きく下がり、同大統領も無理押し出来なかったのかも知れないし、金儲け第一主義のトランプ大統領が、1兆ドルの対米投資や原発建設、F-35売却ビジネスをより重視した結果かも知れない。

