サウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド皇太子が先週(11月18日)、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談し「戦略的防衛協定」に調印。米国は異例の厚遇でもてなした。
皇太子はトランプ氏にスーダン内戦の調停を依頼したが、真の狙いは同国で代理戦争を行っているライバルのアラブ首長国連邦(UAE)を追い落とすことにある。
破格の厚遇
トランプ氏は皇太子を破格の厚遇でもてなした。ホワイトハウス到着に合わせて戦闘機を飛ばし、昼食会に加えて晩餐会まで催した。晩餐会には約100人が招かれ、サウジのサッカーチーム「アルナスル」所属のクリスチャン・ロナウド氏やトランプ氏と喧嘩別れした自動車テスラ社のイーロン・マスク氏らが招かれ、大統領の長男ジュニア氏らが接待した。
首脳会談では、皇太子は最新鋭ステルスF35戦闘機48機、戦車300両などの兵器購入で合意、「戦略的防衛協定」に署名した。同協定は日米安保条約ほどではないが、最大限のサウジ防衛をうたっている。皇太子はこうした米側の接遇にこれまで表明していた6000億ドル(93兆円)の対米投資を1兆ドルにまで増やすことで応えた。
加えて皇太子は反体制記者カショギ氏殺害事件を過去のものとし、完全に国際舞台に復帰したことを印象付けることに成功した。ABC放送の記者が「皇太子がカショギ氏殺害を命じた」という米情報機関の報告書について質問した際、トランプ氏が激怒、「ABCの放送免許取り消す」と息巻く一幕もあった。
皇太子はこのほか、米国の最新のAI技術の導入や民生用の原子力開発の協力についても合意したが、核燃料の自前の再処理問題に関しては先送りとなり、獲得できない唯一の事案となった。イスラエルとの国交樹立については「パレスチナ独立国家への道筋がついてから」とやんわり拒み、トランプ氏が望む「アブラハム合意」への参加を見合わせた。
