今回トランプ氏を抱き込んで、スーダン内戦終結の調停を依頼したのも、実際にはUAEの活動を制限、排除してもらうという意図があるのは明らかだ。だが、トランプ政権にとってはUAEも親密な同盟国であり、難しい立場に陥るのは確実だ。
トランプの著しい倫理観の欠如
こうしたペルシャ湾岸のライバル関係に付け入る格好で不動産ビジネスを拡大させているのがトランプ氏の一族企業「トランプ・オーガニゼーション」だ。トランプ大統領の公職の延長線上なのか、純粋なビジネスなのかが判然としない。政治と商売の境界が極めてあいまいなのだ。「その背景にはトランプ氏の著しい倫理観の欠如がある」(ベイルートの消息筋)。
トランプ氏はビジネス業務からは「自分は手を引いているので問題はない」としているが、倫理的には大きな問題だろう。「トランプ・オーガニゼーション」は次男エリック氏が取り仕切っており、サウジアラビア、UAE、カタール、オマーンなど湾岸全域で現地の政府に取り入り、不動産開発を手掛けている。
例えば、サウジの首都リヤドの近郊にあるディルイーヤ開発だ。この町は世界遺産にも登録されているサウジの歴史的都市。サウド王家の最初の首都があった場所とされており、ムハンマド皇太子は630億ドルの巨費をかけて開発を進めており、「トランプ・オーガニゼーション」の参画が発表される見通し。
40軒に上るホテルやオフィスビル、ショッピングモールなどが計画されており、トランプ氏が5月にサウジを訪問した際、皇太子の案内で視察した。米紙によると、住居の40億ドル分はすでに売却済みという。サウジ国内では、「トランプ・オーガニゼーション」はこれまで、ジェッダのトランプタワー建設のほか、リヤドで2つのプロジェクトも発表された。
カタールとオマーンではゴルフ場建設、UAEのドバイでもトランプタワーの建設が進められている。エリック氏は10月にはリヤドを訪問し、皇太子の経済フォーラムで演説し、サウジとの親密ぶりをアピールした。
