米国のトランプ大統領は9月29日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談後、ガザ戦争の終結に向け米国提案の「包括的和平計画」で合意したと発表した。「停戦」と引き換えにハマスが「72時間以内に人質全員を解放する」というのが骨子。ハマスは条件付きで受諾した。
大統領が終戦を急いでいるのは10日に発表される「ノーベル平和賞獲得」に照準を合わせているからだろう。
喉から手が出るほどほしい
トランプ氏は1期目からノーベル平和賞獲得への熱意をむき出しにしてきた。日本の故安倍晋三首相が受賞を推薦したことはつとに知られている。2期目になってもその思いは高まる一方で、平和賞委員会があるノルウエーのストルテンベルグ財務相に電話し、自分を売り込んだと伝えられている。
先月23日に行った国連総会の演説でトランプ氏は「わずか7カ月の間に7つの戦争を終結させた」と自画自賛した。南部バージニア州の基地に集めた米軍幹部への演説でも「平和賞は何もしていない人に授与されるだろう。米国にとって大きな侮辱」などと述べて、自分こそ賞を授与されるにふさわしいと強調した。「喉から手が出るほどほしいのだ」(識者)という。
トランプ氏がいう「7つの戦争」とは、タイとカンボジア、インドとパキスタン、イランとイスラエル、エジプトとエチオピアなどの対立だが、必ずしも米国の介入が紛争の解決をもたらしたとは言い難い。インドのモディ首相はトランプ氏の言い分を否定している。
トランプ氏の主張があまりインパクトを持たないのは世界を揺るがす「2つの戦争」の解決に寄与していないからだ。言うまでもなくウクライナ戦争とガザ戦争である。ウクライナ戦争では8月にアラスカでロシアのプーチン大統領と会談し、停戦を呼び掛けたものの、ロシアは逆にウクライナ攻撃を激化させている。
