フィナンシャル・タイムズ紙が、「イスラエルの財務大臣は、一部欧州諸国のパレスチナ国家承認の動きに対抗して西岸の併合を持ち出したが、アラブ首長国連邦(UAE)の外務副大臣は、そのような行為は、UAEとイスラエルを国交正常化したアブラハム合意に対する越えてはならない一線であると批判している」という解説記事を掲載している。要旨は次の通り。
9月3日、UAEはイスラエルに対して西岸を併合すればレッド・ライン(越えてはならない一線)だと警告した。UAEは、アブラハム合意と呼ばれる2020年に結ばれたアラブ4カ国とイスラエルの国交正常化の最も重要な国である。
ラナ・ヌセイバUAE政務担当外務副大臣は、「西岸の併合は、UAEにとりレッド・ラインであり、アブラハム合意の精神を酷く傷つけるものであり、域内の統合への動きを終わらせるものだ」と述べた。この数時間前、イスラエルの極右のスモトリッチ財務大臣は、欧州諸国のパレスチナ国家承認に対して西岸の82%を併合すると応酬していた。
そうなると300万人のパレスチナ人を西岸の20%以下の地域に押し込めることになるだろう。専門家他によれば、UAEは、例えばイランに対する12日間戦争など、域内でのイスラエルの好戦的な態度にも憤激している由だ。
UAEの他にバーレーン、モロッコ、スーダンが署名したアブラハム合意は、第1期トランプ政権の外交政策の重要な成果だったが、第2期トランプ政権は、それに匹敵する成果として域内最大の経済大国であるサウジアラビアとイスラエルとの国交正常化を望んでいる。そうなれば、イスラエルにとって最大の成果となる。
しかし、今回のUAEの警告は、そもそもアブラハム合意自体が危うくなっていることを意味し、イスラエルとアラブ諸国との関係正常化を拡大しようとするトランプ大統領の野心へのダメージとなろう。
