この記事でも、UAEは、域内でのイスラエルの好戦的な態度に憤慨していると指摘しているが、湾岸協力理事会(GCC)諸国がイスラエルに対して批判を強めているのは彼等がイスラエルとイランとの衝突に巻き込まれることを恐れているからである。特に、イスラエルとイランの12日間戦争でイラン側のミサイル攻撃がイスラエル側に有意なダメージを与えられなかった結果、次回の衝突が起きた時にイスラエルの身代わりにGCC諸国、特にイスラエルと国交を樹立したUAEとバーレーンがイランのターゲットになる可能性が高まっている。
「イスラエルの攻撃をUAEが支援している」等、いくらでも難癖は付けられる。そして、イランはGCCを射程距離に収める短距離弾道弾やドローンは十分に保有しており、イラン・イラク戦争時のタンカー戦争や2019年のサウジアラビアの油田攻撃の様に、イランは、GCCを身代わりに攻撃した前科がある。
西岸の併合を既成事実化か
今回のスモトリッチ財務大臣の発言は、英仏加のパレスチナ独立国家阻止を狙ったという見方もあるが、逆に極右勢力は、これをきっかけに西岸の併合を既成事実化しようとしているのではないであろうか。ネタニヤフ首相の最大の関心は、訴追を免れるために首相職を続けることであり、極右政党の支持に依存している彼の内閣は、極右の意見に引きずられざるを得ない。
終わりの見えないガザの衝突で国内では厭戦気分がますます高まっているが、皮肉なことにその結果、ますます、好戦的な極右勢力の主張がネタニヤフ首相に影響している。
なお、西岸の併合問題の陰に隠れているが、西岸地区を二つに分断する入植地の建設も深刻な問題であり、西岸を一気に併合してしまおうとするプランが頓挫しても、西岸が二つに分断されれば、パレスチナ独立国家の樹立は事実上不可能になりかねない。

