2025年12月5日(金)

教養としての中東情勢

2025年8月20日

 イスラエルのネタニヤフ政権はパレスチナ自治区ガザの中心都市、北部ガザ市の制圧計画を閣議で承認、同市の完全支配に乗り出した。だが、イスラム組織ハマスは事実上壊滅状態で、何のための侵攻拡大か判然としない。

ガザ軍事作戦の正当性を主張するイスラエルのネタニヤフ首相(ロイター/アフロ)

 人質の命を危険にさらし、住民の犠牲者を増やす結果になる恐れが強い。「戦争の長期化を正当化しただけ」との批判の中で、ネタニヤフ首相は何を狙っているのか。

重大な戦術転換に軍が反発

 イスラエル軍は一昨年の開戦当初、ガザ市からハマスを一掃し、ガザを南北に分断、北部についてはほぼ平定したはずだった。ところが、軍が南部への攻撃に焦点を移し、北部への圧力を弱めると、ハマスの戦闘員はガザ市のトンネル網から再び姿を現し、イスラエル軍を悩まし続けた。

 このためネタニヤフ首相は3月、停戦を一方的に破って軍事作戦を拡大した。しかし、人質の解放も果たせずにハマス殲滅に失敗した。

 首相は5月、再び軍事行動を激化させたが、ハマスを屈服させることはできなかった。今回のガザ市完全制圧作戦は3回目の軍事行動拡大ということになる。

 今回のガザ市制圧でハマスを壊滅させることができるのか。イスラエル軍は現在、ガザの75%を支配し、住民を残りの25%に閉じ込めている。地元メディアなどによると、8月8日の治安閣議で決定された内容は2カ月かけてガザ市の住民100万人を南部に退避させ、ハマスの奇襲攻撃2周年となる10月7日以降に市に侵攻する計画だ。


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