ウォールストリート・ジャーナル紙の7月17日付け社説が、「シリア政府軍とドゥルーズ教徒勢力が衝突して多数の死者が出てイスラエルが軍事介入したためイスラエルとシリアの関係正常化は当面の間頓挫した。シャラア・シリア暫定大統領は、まず自分の軍をコントロールするべきだ」と論じている。要旨は次の通り。
シリアがアブラハム合意(2020年、第1期トランプ政権が仲介したイスラエルとアラブの数カ国との国交正常化合意)に参加するのは時期尚早だったことが判明した。シリアの暫定政府軍がドゥルーズ教徒を虐殺し、イスラエルがシリアの首都ダマスカスの国防省や大統領官邸を空爆したからだ。
その結果、政府軍をコントロールすることに失敗したシャラア暫定大統領の政権は勢いを失ったが、イスラエルもシリアの宗派間衝突の泥沼に巻き込まれることに注意しなければならない。
スウェイダ(首都ダマスカスから南方約100キロ)での戦闘は、遊牧民とドゥルーズ教徒とのローカルな衝突で始まった。シリアの国防省と内務省は、イスラエルの警告を無視して、ダマスカス以南に政府軍部隊を進軍させてドゥルーズ教徒を屈服させようとしたがドゥルーズ教徒に不意打ちされて激高して虐殺を始めた。
米国が停戦を仲介し、シリア政府軍が撤退して7月17日にはドゥルーズ教徒の民兵が失地を回復したが、ドゥルーズ教徒側が報復を行っていると伝えられるとベドゥイン側が新たな攻撃を開始した。同日、ネタニヤフ・イスラエル首相は、「この停戦は力によってもたらされたのであり、嘆願の結果ではない」と述べ、さらに「シリア政府軍がダマスカスの南に移動することを認めないし、スウェイダのドゥルーズ教徒を害することを許さない」とし、「彼らは、我々の兄弟(イスラエルのドゥルーズ教徒)の兄弟だ」とも述べた。
なお、イスラエルには15万人のドゥルーズ教徒が住んでおり、(他のアラブ系は、イスラエル軍の兵役に就いたりしないが)イスラエルのドゥルーズ教徒は兵役に就き、その勇敢さを評価されている。この発言は、イスラエルの政策がイスラエルのドゥルーズ教徒とシリアのドゥルーズ教徒との間の親密さに基づいていることを示している。さらに、トルコが後ろ盾で元アルカイダのシャラア暫定大統領の政権の支配地域との間に緩衝地帯を設けるという安全保障上の理由もある。
