ブルッキングス研究所トルコ部長のアイデンタスバスが、7月3日付けフィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説‘Turkey and Israel risk sliding towards confrontation’で、イスラエルとイランの12日間戦争は、中東のパワーバランスを書き換えたが、今、最も危険な出来事はイスラエルとトルコの勢力争いだ、と論じている。要旨は次の通り。
イスラエルとイランの12日間戦争は、中東のパワーバランスを書き換えた。大胆となったイスラエルは中東を再構築しようとし、弱体化したイランはそのイスラム革命体制の存続に必死となり、米国は再び長く続く戦争に巻き込まれることを躊躇している。しかし、この地域で現れた最も危険なことは、イスラエルとイランの再衝突ではなく、トルコとイスラエルの激しい勢力争いだ。
トルコのフィダン外相は、OIC(イスラム協力機構)サミットで、「中東にはパレスチナ問題もシリア問題も存在しない、存在するのはイスラエル問題だ」と発言した。トルコにとりイスラエルは、かつては同盟国であり、その後、競争相手となり、そして、今やあからさまな敵となった。
トルコはイスラエル側が中東の覇権国だと考え、そう振る舞うことを不愉快に思っている。なぜなら、トルコが中東の覇権国となることは、エルドアン大統領の長い間の密かな野望だからだ。そして、イスラエルがトルコを脅かしているというのは、もはや、トルコ政府、主要メディアでマイナーな意見ではない。
他方、イスラエル側の安全保障当局者の一部も、トルコの中東地域に対する影響力は長い目で見て「イランより脅威」と見なしている。エルドアン大統領は大っぴらにハマスを支持してイスラエル政府を怒らせ、イスラエルはトルコ側が脅威と見なしているシリアのクルド人に接近したが、域内屈指の軍事大国間の争いは、すでに不安定な中東地域をさらに不安定化させている。
シリアこそがイスラエルとトルコが衝突している場所だ。2024年暮れにシリアでアサド政権が崩壊して以来、両国はその後のシリアを自国に都合が良いようにしようとしている。トルコはシリアに対する影響力を強めている。現在、権力を握るトルコの同盟者を支援し、彼等がトルコと同盟する安定した中央政府となるようしている。
