イスラエル国内ではネタニヤフ首相に対してシリアのドゥルーズ教徒を支援するべきだという政治的圧力が広範に存在しており、衝突が始まると約1000人のイスラエルのドゥルーズ教徒が国境を越えてシリアに応援に駆け付け、イスラエルの空爆は、左派、中道、右派の指導者達が支持している。
問題は、シリアでこのような宗派的な暴力が広まり、シリアの分裂を深め、マフィアやイスラム過激主義勢力がその混乱に乗じることであり、(親イランのアサド政権の崩壊で)シリアから追い出されたイランが舞い戻ろうとすることである。また、シャラア暫定大統領がシリアを武力で再統一しようとしていることは、その限界を示唆している。
彼は、主要閣僚に自分に忠実な者を任命し、さらに、軍司令官に外国人のイスラム過激主義者を任命し、ほとんど全ての権力を自分に集中させる憲法を作った。武装解除に応じて部隊を解散すれば身の安全を保証するというドゥルーズ教徒やクルド人に対する口頭の約束は、これまで以上に信用できなくなっている。
暫定政権がシリアの支配を強化し、自衛のために武装する少数派の武装勢力とも協力出来ることが望ましいが、まず手始めにシャラア暫定大統領は、自分の部隊をコントロールするべきである。
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宗派、民族に分断されたシリアの再統一
シリアでは、既にイスラエルとトルコの代理戦争が始まっており、早速、衝突が始まった。シリア情勢は色々な要素が絡み合っているので主要な要素を解説する。
まず、大きな話は、イスラエルとトルコの緩衝地帯だったシリアが昨年12月以来、混乱し、両国がシリアへの影響力を強めようとして、それぞれの代理勢力が対峙して干戈(かんか)を交えていることだ。シャラア暫定大統領の政権は、トルコが後押しして政権を獲得したのでトルコの強い影響下にあると考えられる。
しかも、この暫定政権はイスラム原理主義を標榜しており、スポンサーのトルコもエルドアン大統領の下でイスラム原理主義的な傾向を強めている。イスラエルは、ハマス、ヒズボラ、イランというイスラム原理主義勢力と対峙しており、イスラム原理主義勢力の影響がイスラエル・シリア国境まで広がれば自国の安全保障上の脅威となると考えているのは間違いない。
