イスラエルが6月13日にイランを奇襲攻撃したのを機に、イスラエル・イラン間の戦闘が激化した。6月22日には米軍がイランの核施設を攻撃し、その報復としてイランがカタールの米軍基地を空爆するなど、中東情勢が緊迫化した。その後、イスラエルとイランが停戦に合意したものの、イラン核問題の進展次第では、戦闘が再燃する恐れがある。
中東情勢の先行きが益々不透明となる中、日本はエネルギー面、特に原油調達で中東産油国を大きく頼っている。今回のイラン・イスラエルの交戦により、ホルムズ海峡の封鎖リスクが高まったことは、大きな不安要素となった。こうした中東依存に伴うエネルギー課題を解消する手段として、米国産エネルギーが重要性を帯びている。
イスラエル・イラン戦争で懸念されたホルムズ海峡
イスラエル軍がイランの核施設や軍関係者を標的に奇襲攻撃を開始し、イランがそれに応戦して以来、連日続いた戦闘は米国仲介の停戦合意により、ひとまず終結した。
この「12日間戦争」においてエネルギー面での懸念点は、ホルムズ海峡の封鎖であった。ホルムズ海峡はオマーンとイランの間にある海峡で、ペルシャ湾とオマーン湾、アラビア海を結んでいる。また、世界最大級の原油タンカーが航行できる十分な水深と海峡幅を有し、重要な海上交通路の要衝(チョークポイント)である。
米国エネルギー情報局(EIA)によれば、2024年にホルムズ海峡を通過した原油量(コンデンセートを含む)は日量1430万バレル(bpd)、石油製品量は590万bpdとなった。これは世界の海上輸送量の25%以上となり、世界の石油消費量の約20%に相当する。天然ガスについても、ホルムズ海峡経由の液化天然ガス(LNG)貿易量が世界全体の約20%を記録した。
大量の石油やLNGがホルムズ海峡を日々通過している一方、同海峡を迂回できる代替の輸出ルートは限定される。まず、サウジアラビアにある全長約1200キロメートル(km)の東西原油パイプライン(輸送能力500万bpd)は、東部の油田地帯アブカイクから西部の紅海沿いの港町ヤンブーまでを結ぶ。
次に、アラブ首長国連邦(UAE)にある全長約360kmの原油パイプライン(輸送能力150万bpd)は、アブダビ首長国の油田地域ハブシャーンから、ホルムズ海峡のインド洋側に位置する港町フジャイラに通じている。サウジアラビア・UAEのパイプライン輸送能力(合計650万bpd)を踏まえると、海峡が封鎖された場合、現在の通過量全てをカバーすることは困難である。