2025年7月16日(水)

教養としての中東情勢

2025年6月16日

 イスラエル軍は6月13日未明(現地時間)、イラン全土を空爆した。イランの中部ナタンズにある核関連施設や軍事基地、さらには軍幹部や核科学者らの住宅など200カ所以上を攻撃した。テヘランの石油貯蔵施設も攻撃した。

イスラエルのイランへの大規模軍事攻撃により、全面戦争へと進もうとしている(ロイター/アフロ)

 イランが弾道ミサイルなどで反撃し、全面戦争の懸念が高まった。危機の背景には「新たな危機を作って政治的な延命を図る」イスラエルのネタニヤフ首相の「究極の瀬戸際作戦」がある。

国内外からの圧力

 イスラエルの攻撃には戦闘爆撃機など200機が参加、イラン軍のバケリ参謀総長ら軍幹部や核科学者9人を殺害した。イランの反撃を予想したイスラエルは特別非常事態を宣言。ネタニヤフ首相は「イランの核開発はイスラエルの生存にとって脅威。脅威を除去するまで作戦は続く」と述べた。米国のトランプ大統領は「イランは壊滅的打撃を受けた」と語った。

 イランの最高指導者ハメネイ師は「イスラエルに厳しい罰を与える」と報復を宣言し、「米国も重い代償を払う」と表明した。イランは直ちにドローンや極超音速ミサイルをイスラエルに向けて発射、ほとんどは米国の支援を受けたイスラエルの防空網に破壊されたが、一部は商都テルアビブなどに着弾、10人が死亡、多数が負傷した。イラン側は約80人が死亡した。報復が報復を呼ぶ軍事大国同士の全面戦争に近づいた。

 米国とイランがオマーンを舞台にイランの核開発阻止について交渉中。15日にも第6回目の協議が行われる予定となっていたが、まさにそうした時期にネタニヤフ首相はなぜイラン攻撃に踏み切ったのか。ネタニヤフ氏にとって政治生命を賭けた「究極の瀬戸際作戦」だった。


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