2025年5月13日付のフィナンシャル・タイムズ紙は、最近トランプ大統領とネタニヤフ首相との間に隙間風が吹いているが、最大の問題はトランプ政権の混乱した中東政策であり、イランとの核合意を拙速に結べばイスラエルのイラン攻撃を促すかも知れないというキム・ガッタスの論評を掲載している。

トランプ大統領の中東政策は、内政と同じで、「トランプ第一主義」だ。今回の中東訪問の主目的は、米国にペルシャ湾岸アラブ産油国(GCC)からの巨額の投資を呼び込み、米企業にビジネス・チャンスを与えるということだ。さらにトランプ大統領は外交上も成果を上げようとしたが、想定外のやり方だった。
まず、フーシ派と同派の商船攻撃を停止することに合意した。この停戦合意はいつ何時崩れるか分からないくらい脆いものだが、問題なのは、イスラエルへの攻撃停止が含まれていないことである。さらに、(イスラエルを排除したハマスとの直接交渉の結果)ハマスは、トランプ大統領に対する好意として見返り無しに1人の米国籍のイスラエル人の釈放に同意した。
ハマスは、より広範囲な停戦を望み、200万人のパレスチナ人は援助物資の供給再開を絶望的に望んでいる。GCC 諸国は、自分達を成熟して建設的な米国のパートナーだと見せようとしている。
彼等は、自分達が米国の現金自動引き出し機と見なされることに憤りを感じ、サウジアラビアの予算は油価の低下で逼迫しているが、ウクライナ問題に関する協議の場を提供し、イランとの緊張緩和、アサド政権後のシリアの再建、レバノンの新政権を支援することに前向きだ。
この様にネタニヤフ・イスラエル首相以外の誰しもがトランプ大統領の好意を得ようとしている。他方、トランプ大統領のネタニヤフ首相に対する不興の兆候が現れたのは、4月の記者会見だった。
トランプ大統領は、イスラエルに対する17%の追加関税を取り下げず、イスラエルは年間40億ドルの援助を得ていると指摘した。さらに米国のイスラエルとの貿易赤字も増大している。