2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月5日

 同大統領の考えではイスラエルは、米国で儲けている。ネタニヤフ首相にとり最悪の瞬間は、トランプ大統領がイランと直接協議していることを明らかにした時だ。

 トランプ大統領は、彼のガザを中東のリビエラにするという考えに反するネタニヤフ首相のガザに対する攻撃を喜んでいない。同大統領は自分の考えが冷酷非情なもので実現不可能だとも思っていない。

 米国は、色々な取引からイスラエルを外してネタニヤフ首相を驚かし続けている。何十年も続くイスラエルと米国の同盟関係は強靱だが、トランプ大統領のネタニヤフ首相に対するメッセージは明確だ。「決まった計画に従え」だ。

 トランプ大統領はネタニヤフ首相とその極右政権の政治生命の延命のための戦争には興味は無い。トランプ大統領の中東訪問は真の狙いを明らかにしなかったが、本当に問題なのは、関税からロシアのウクライナ侵攻まで全ての問題に対するホワイトハウスの混乱したやり方だ。

 このようなやり方でイランとの核開発問題の交渉を行う事はリスクが非常に高い。交渉の成果を急げば、イスラエルが単独でイランの核施設を攻撃するようネタニヤフ首相の背中を押すような弱い合意となり、中東地域を混乱に陥らせ、トランプ大統領が今週署名するであろう「美しいディール」を沈没させてしまうだろう。

* * *

イスラエルの警戒

 最近、急速にトランプ大統領とネタニヤフ首相の関係が緊張しているとの指摘が増えている。確かにフーシ派との停戦の対象にイスラエルが含まれず、フーシ派の国際空港攻撃でイスラエルの国際線の発着が停止してしまった。また、ハマスとの直接交渉はイスラエルを怒らせたであろう。

 最新の出来事は、トランプ大統領がサウジの仲介でエルドアン・トルコ大統領も立ち会い(ビデオ参加)の下でシリアのシャラア暫定大統領に面会したことだ。元アルカイダのシリアのイスラム原理主義政権に対してイスラエルが警戒するのは当然で、イスラエルはシリア領内の一部を予防占領し、ドゥルーズ教徒(イスラエル国内では親ユダヤ)と治安部隊が衝突すると警告のために空爆している。


新着記事

»もっと見る