2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月5日

 隣国シリアに域内のライバルであるトルコの影響力が強くなることも嬉しくないだろう。なお、サウジが仲介したのは、同国もレバノン、シリアへの影響力を強めようという魂胆からだろう。

 しかし、トランプ、ネタニヤフ両者の関係が緊張するのは驚くべきことではない。両人ともにエゴが強く、これまでネタニヤフ首相は自分勝手な振る舞いで歴代の米国大統領を翻弄してきた。また、今回の一連の出来事は、単にトランプ大統領が、「トランプ第一主義」を貫徹しているからに過ぎない。

トランプの焦り

 トランプ大統領にとってネタニヤフ首相がどう思うか関係無い。さらに、昨年の10月にイスラエルがイランの防空システムを破壊したので、イランが防空システムを再建するまでの数カ月間がイスラエルにとってイランを攻撃する千載一遇の機会となっている。

 しかし、性格的に暴力に巻き込まれることを恐れるトランプ大統領は、イスラエルのイラン攻撃に米国が巻き込まれる事を非常に恐れている。最近のネタニヤフ首相への冷たい態度はその気持ちを反映しているのかも知れない。

 トランプ政権の政策が混乱しているというのは誰しもが認める点で、イランとの核交渉に拙速は禁物だという指摘は正論だが、イラン側が核開発は放棄しないと一貫しているのに対して、米国はイスラエル側の要求を容れて核開発の放棄を求めている。交渉は根本的なところで暗礁に乗り上げているが、トランプ大統領が合意は近い等と発言しているのは、イスラエルのイラン攻撃が高まっていることへのトランプ大統領の焦りであろう。

エネルギー確保は総力戦amazon楽天ブックスhonto
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る