2025年6月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年5月23日

 Economist誌4月26日号が、イランの核活動を巡るイランと米国の交渉について、トランプ大統領が当面する3つの主要な問題を指摘し解説する記事を掲げている。要旨は次の通り。

(dvids・Racide/AlexLMX/gettyimages)

 イランの外相アラグチと米国の特使ウィトコフは4月19日にローマで二度目の交渉を行った。重要なのは「技術的な交渉」が同じく19日に始まったことである。核についての交渉は複雑であるので、専門家の会合は双方が詳細の議論に入りつつあることを意味する。

 双方とも取引を欲しているのは明らかである。彼らは2015年の合意(JCPOA)を改善したいと希望している。しかし、トランプは三つの大きな障害と取り組む必要がある。

 第一は、政権内の強硬派である。ウィトコフは米国が何を欲するかについて矛盾したメッセージを発している。

 4月14日のFox Newsのインタビューで、彼はイランにJCPOAと同様3.67%までのウラン濃縮を認めることを示唆したが、翌日には、イランは濃縮活動を「停止し除去する」必要があると述べた。前者の目標は現実的であるが、後者はそうではない。ウィトコフが立場を180度ひるがえしたのは、譲歩に不満なワシントンのタカ派の圧力のためである。

 第二は、イランが提起している問題である。イランは新しい合意がJCPOAよりも永続的でカネになることを欲している。従って、イランはトランプ(あるいは将来の大統領)が合意を再び捨て去ることをしない保証を求めるであろう。

 まずは、合意を米国議会上院で承認される条約とすることを欲している――JCPOAは条約ではなかった。しかし、それは鉄壁の保証ではない。条約は破棄され得るし、大統領が条約を一方的に放棄した先例はある。

 イランは経済的な保証も欲している。制裁を解除するだけでは十分でない。合意は目に見える恩恵を約束するものでなければならない。その点でJCPOAは失望させるものだった。

 イランにより多くの石油の輸出を認めたが、より多くの外国の直接投資を解除することには失敗した。世界銀行によれば、2016年のイランへの直接投資の流入は国内総生産(GDP)比0.7%だったが、これは15年の0.5%からの微増にとどまる。

 制裁は一つの障害である。JCPOAは一部を解除したが、その他はそのままだった。

 イラン自体も障害である。トランプが米国の制裁のすべてを解除しても、米国が84年以来テロ支援国家に指定する腐敗したイランに投資することについては、西側企業は十分な根拠のある恐怖を依然抱くかもしれない。

 この問題を解決する一つの方法は、湾岸諸国にイランへ貿易と投資を提供するよう説得することである。これがトランプにとっての第三の課題である。


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