2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年5月23日

 第二は、米国が合意から再び離脱しないことの保証をイランが求めているという問題である。バイデン政権が核合意の復活を目指して断続的に交渉した際にもイランはこの保証を要求した。イランにとっては合意を条約とする以上の保証はないと思われるが、米国議会上院が3分の2の多数でその条約を承認することを見込むことは現実的とは思われず、無理と言わざるを得まい。

 第三は、経済的な保証である。それがイランにとって交渉の最大の動機である。合意によって核関連の制裁が解除されるだけでなく、実際に外国の直接投資の流入が実現しなければ意味がない。

 JCPOAの下においても、外国からの投資が実現していないとしてイランは不満を表明していた経緯がある。4月21日にアラグチが行う予定だった(この記事に言及がある)演説で、彼はイランが求めているのはJCPOAの復活ではなく新たな合意だと強調しているが、イランの経済的利益が保証される合意でなければならないとの趣旨である。

 同じ演説で、アラグチはブシェール原子力発電所に加えて今後19基の原子力発電所を建設する予定だとして米国企業の投資を呼び掛けるなど、イランは米国企業に膨大な機会を提供すると述べているのは、トランプの貪欲なビジネスの直感に訴えて合意に誘い込む思惑によるものに違いない。

 トランプがイラン経済の再建に関与するのは異様かもしれないが、ガザをリビエラに変貌させることに関心があるのだからあり得ないことではない。

焦点はトランプの“過大な要求”

 この記事が指摘しているように、イランはサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の湾岸3国の協力で経済的利益を得ることができる。これら諸国は交渉の成功を欲している。

 イスラエルの勝手な行動で地域の安定が害されることを望んではいない。トランプがその気になれば、これら諸国の支援を求めることができるであろう。

 イラン国内の状況は詳らかにしないが、合意の成立を期待する方向に変化が見られるようである。イランが合意を望んでいることは間違いなく、焦点の一つはトランプ政権が何処でその過剰な要求を思いとどまれるかにあるように思われる。

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