2025年7月10日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月13日

 ワシントン・ポスト紙コラムニストのファリード・ザカリアが5月15日付けの論説‘Trump’s reversal on Iran may be his most consequential’で、イランが弱体化している今、先例に囚われないトランプ大統領はイラン核合意を再開させるチャンスがある、と指摘している。要旨は次の通り。

(grynold/gettyimages・Office of the Iranian Supreme Leader/AP/アフロ)

 トランプ大統領の混乱を招く本能と人を背後から撃つ傾向は混乱を招き、抗議が起き、そして、彼は、急に主張を撤回する。しかし、同氏の時としてリスクを取り斜め上を行く思考は、古いやり方を揺さぶった。

 サウジアラビアで彼は元イスラム過激派のシリアの新しい指導者に会い、全ての対シリア制裁を解除すると発言した。また、トランプ政権はイランと新たな核合意を結ぶ用意があるとも繰り返している。もし、彼が核合意を再開すれば中東に新たな平和と安定をもたらすことができるだろう。

 今こそイランの核開発問題について良い取引ができるかもしれない。つまり、イランが弱体化し、サウジアラビアが強くなるという根本的なシフトが起きているからだ。

 イラン国民は、経済制裁で一層悪化している何十年間も続く経済政策の失敗、大規模な腐敗、残忍な独裁政治を続けるイスラム革命体制に対して強い不満を有している。さらに、昨年、イスラエルによるヒズボラに対する驚くべき勝利、イランの防空網の破壊が起き、そして、イランにとり最も重要なアラブの同盟国シリアのアサド政権が崩壊した。これらの出来事から、イランは、イスラム革命直後のイラクの侵攻以来最も弱体化している。

 他方、サウジアラビアは、強くなっている。ムハンマド・サウジ皇太子は、サウジアラビアの近代化という彼の夢を実現するためには中東地域の安定化が必要だと理解しており、その対外政策も変化している。

 フーシ派と事実上の休戦、(国交断絶していた)カタールとの関係改善、レバノンとイラクとより良い関係の構築であり、最も驚くべき兆候は、イランとの国交回復の進展である。サウジ政府要人は、明確にイランの核問題についての協議を支持している。


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