2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月13日

 完全な核開発の放棄を受け入れたリビアのカダフィー体制は、その後、北大西洋条約機構(NATO)の空爆で崩壊しており、イラン側が、核という抑止力を失った後、体制を崩壊させられるのではないかと懸念するのはもっともである。しかも、トランプ大統領は、イランが遵守していたイラン核合意から一方的に脱退した張本人であり、信用できないと考えるのも当然である。

 それにも関わらず、今回、イランがトランプ政権との交渉を受け入れたのは、やはり、イラン側が相当弱っているからだろう。しかし、独自の核開発の継続というのはイラン側にとり、面子の上でも実利の上でも譲れない一線だと考えられる。

ネタニヤフを止められるか

 上記論説で、ザカリアは、トランプ大統領にチャンスがあると書いている。しかし、同大統領は確かにワシントンの強硬派は抑えることができるかも知れないが、果たしてネタニヤフ首相を封じ込められるのだろうか。

 トランプ大統領にとり支持者の動向は最大の関心事だ。そして、米国の人口の25%を占めるキリスト教原理主義者は彼の重要な票田だが、彼等はイスラエルを盲目的に支持している。

 当初、トランプ政権はイランに厳重な管理の下で核開発を認めるとしていたのが、現在は一切認めないとの立場に変わったのは、イスラエルからの圧力があったと考えるのが自然だが、イランは呑めないだろう。

 イランは、最低限、破壊された防空網の再建までだらだらと交渉を引き延ばそうとするだろうが、数日前もCNNが交渉継続中にも関わらずイスラエルはイラン攻撃の準備を進めていると報じているように、近い将来、しびれを切らしたイスラエルが攻撃する可能性は否定できない。

歪んだ戦後日本の安保観 改革するなら今しかない ▶アマゾン楽天ブックスhonto
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る