米国のトランプ大統領が大々的に打ち上げた次世代ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構想は、途方もない開発コストばかりか、技術的にもほとんど実現不可能との見方が専門家の間で広がっている。

トランプ大統領発表したミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構想(AP/アフロ)
技術的な限界
「ゴールデン・ドーム」は、敵国からの核兵器を含むミサイル攻撃から米本土を守ることを目的としてトランプ大統領が発表したもので、任期が終わる2029年1月前までの実戦配備をめざしている。
しかし、①2000億ドル前後の開発コストと維持費が莫大なものになる②これに対抗する中国、ロシアなどとの核開発レースを一段と加速させる③仮に実戦配備にこぎつけたとしてもミサイル攻撃から米本土全体を守り切れない④完成までの時間的余裕がない――などの問題が提起されている。
中でも最大のハードルは、技術的限界だ。
大統領は去る5月19日、ホワイトハウスで計画を正式に公表し、「ゴールデン・ドームがひとたび完成すれば、地球の反対側から、そして宇宙から発射されたミサイルを迎撃できることになる」と言明した上で、「できれば自分の任期終了までに配備されることを望む」と念を押した。
同構想についてはもともと、イスラエルが近隣中東諸国のミサイルやロケットから自国を守るため打ち出した地上配備の「アイアン・ドーム」計画にヒントを得て、トランプ氏が大統領就任早々の去る1月に基本的考えを表明していた。
だが、米国の場合は、将来的に中国、ロシア、北朝鮮、イランなどを想定したグローバルな地点からの核の脅威への対処を前提としているだけに、地上配備ではなく、米本土に飛来するミサイルを早期探知・追跡・迎撃するためのおびただしい数の軍事衛星ネットワークの宇宙構築を大前提としている。