都会で30分の旅をしたければ、探してほしい場所がある。
屋上だ。
人は屋上が大好きだ。例外なく。
なぜか。そこが「自由」な場所だからである。広い空と見下ろす景色を独り占めできる。自分より上には、鳥とトンボを除いて誰もいない。
あの頃と変わらない、空と一つになれる場所がそこにある(筆者撮影)
父親が勤めていた銀行の3階建ての社宅に暮らしていた時、たまたま開いていたドアを見つけ、一人こっそり上ったのがはじめての屋上体験だ。4歳の頃。社宅の子どもたち、幼稚園までの坂道、横浜の港、マリンタワーまで。全部見える。怪獣映画のセットに立つウルトラマンのよう。
「僕、空飛ぶ巨人になった!」
以来、屋上は私にとって一人変身できる場所になった。
学園ものには昔から現在まで必ず屋上が出てくる。漫画もアニメも実写ドラマも。屋上が出てこない学園もの作品はゼロ、と言っていい。
屋上は、教師の目から、校則の網から逃れられる学校という檻の中の唯一自由な場所。だから屋上を目指すのは学内の逸脱者だ。不良であり、ヤンキーであり、いじめられっ子であり、恋する少年少女である。
ただ、現実の学校で屋上へのドアの鍵が開いていることはない。危ないからだ。
それでも、だれもが行ける屋上がある。
