新幹線「のぞみ」が停車するような大きな駅を降りれば、たいがい百貨店がある。そして百貨店こそ、屋上の王様だ。子どもの頃、百貨店の屋上に母親に連れて行かれた経験がある方は少なくないだろう。大人になった今、今度は逆に自分の子どもを連れて訪れている人もいるかもしれない。
「違う時間」が流れる場所
今回は一人で旅してほしい。30分でいいから百貨店に寄ってほしい。地下食品街で、好きなお弁当でも、お菓子でも、買っていって。そして、できればエレベーターじゃなくエスカレーターで。
百貨店はたいがいその街の一番中心にある。ビル群の中にある。コンクリートに囲まれている。
そんなコンクリートジャングルの中の百貨店の屋上に上がる。そして表に出る。
いきなり青空が広がる。都会のど真ん中で。空という最高の自然を独り占めできる。
時折、百貨店の屋上には植物ショップやペットショップがある。ネオンテトラや金魚が泳いでいる。名を知らぬ海外のトカゲがこっちをにらむ。
脇にはうどん店があって、外回り営業の会社員が一人で油揚げをくわえている。奥にはこぢんまりとした庭園があり、さらに奥には謎の神社があったりする。
ここだけ、違う時間が流れている。空と、金魚と、うどんと、神社。買ってきたお弁当かお菓子をベンチで頬張って、空を見上げて、30分の自由を手に入れたら、今度はエレベーターでさっさと下界へ戻ろう。仕事の時間だ。
大丈夫。30分の天界は、いつでもあなたを迎えてくれる。
