『Wedge』の読者は、たいがい新幹線に乗っていらっしゃる。
つまり出張や旅行が多い方たちである。ならば覚えがあるはずである。旅先で必ず余る空き時間に。
例えば、帰りの新幹線に乗るまでの1時間30分。どうやって隙をつぶそうか。
そこで「30分の旅」だ。
山手線の内側、とある緑地の源流の泉で産卵するオニヤンマ
どこへ旅をするか? 「流域」を探すのだ。流域とはなにか。雨が降ったら水が集まる谷構造の集水域。中心にはたいがい川が流れている。これが流域だ。
日本の土地はほぼ全て、どこかの川の流域に属している。平地がほとんどない細長い火山国だからである。一級河川水系だけで109、さらに中小河川が無数にある。
今あなたのいる場所もいずれかの川の流域だが、実はしばしば勘違いする。近所の大きな川の流域に暮らしている、と思ってしまうのだ。
ところが、都市にしても田舎にしても、小さな川は治水対策でしばしば暗渠化されている。ゆえに川が見えない。結果、人は自分のいる場所の流域をつくった川を知らなかったりする。
でも、大丈夫。見つけることができる。まず、地形はちゃんと残っている。川筋と谷構造はそのままだ。暗渠となった川は緑道や、くねくね曲がった路地や、時にはスナックや居酒屋が軒を連ねる道になっている。銭湯、クリーニング店、鰻屋が並んでいたら大概、元々そこは川だ。
