2025年12月6日(土)

30分の旅

2025年11月1日

川に沿って歩いて行けば……

 では、旅先の宿泊地を起点に、流域を訪ねる旅に出てみよう。お供はYAMAPの「流域地図」アプリが便利だ。スマホでアクセスすれば、今いる場所がどの川の流域か一発でわかる。

 東京の谷中・根津・千駄木。通称「谷根千」には、上野の不忍池に注ぐ藍染川が流れていた。商店街は川沿いにある。歩いているうちに、川だった暗渠の路地が見つかるはずだ。歩いていると、地元の野良猫のような気分になれる。

 また、暗渠となった川をさかのぼると、最奥には今も湧水を湛えた神社や公園があったりもする。街中の泉を探すのも一興だ。

 一方、川を降ればたいがい海に着く。

 この夏訪ねた香川県高松市。泊まったホテルの近くに小さな川が流れていた。

 朝、運動代わりに川沿いを歩く。あっという間に海に出た。目の前は瀬戸内海。港湾施設や観覧車の向こうに、いくつもの島が重なって見える。小豆島からの船が入港し、直島行きの船が出港する。

 海沿いには高松城がそびえる。道に面した堀をのぞくと、引き潮で干潟が現れ、無数のカニがダンスをしている。高松城は日本を代表する海城で、堀の水は全て海水。高松城自体が一つの完結した流域だ。城は山の天辺で、降った雨は全て周囲の堀に注ぐ。奥の堀にはタイまで泳いでいる。

 カニの踊りにタイの舞。竜宮城を朝から訪れることができた。流域散歩のおかげである。

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Wedge 2025年11月号より
未来を拓く「SF思考」 停滞日本を解き放て
未来を拓く「SF思考」 停滞日本を解き放て

SFは、既存の価値観や常識を疑い、多様な未来像を描く「発想の引き出し」だ。かつて日本では、多くのSF作家が時代を席巻した。それはまさに、科学技術の進展や経済成長と密接に結びついていた。翻って、現代の日本には、停滞ムードが漂う中、様々な規制やルールが、屋上屋を架すかのようにますます積み重なっている。だが、それらを守るだけでは新たな未来は拓けない。硬直化した日本社会をほぐすため、今こそ「SF思考」が必要だ。


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