川に沿って歩いて行けば……
では、旅先の宿泊地を起点に、流域を訪ねる旅に出てみよう。お供はYAMAPの「流域地図」アプリが便利だ。スマホでアクセスすれば、今いる場所がどの川の流域か一発でわかる。
東京の谷中・根津・千駄木。通称「谷根千」には、上野の不忍池に注ぐ藍染川が流れていた。商店街は川沿いにある。歩いているうちに、川だった暗渠の路地が見つかるはずだ。歩いていると、地元の野良猫のような気分になれる。
また、暗渠となった川をさかのぼると、最奥には今も湧水を湛えた神社や公園があったりもする。街中の泉を探すのも一興だ。
一方、川を降ればたいがい海に着く。
この夏訪ねた香川県高松市。泊まったホテルの近くに小さな川が流れていた。
朝、運動代わりに川沿いを歩く。あっという間に海に出た。目の前は瀬戸内海。港湾施設や観覧車の向こうに、いくつもの島が重なって見える。小豆島からの船が入港し、直島行きの船が出港する。
海沿いには高松城がそびえる。道に面した堀をのぞくと、引き潮で干潟が現れ、無数のカニがダンスをしている。高松城は日本を代表する海城で、堀の水は全て海水。高松城自体が一つの完結した流域だ。城は山の天辺で、降った雨は全て周囲の堀に注ぐ。奥の堀にはタイまで泳いでいる。
カニの踊りにタイの舞。竜宮城を朝から訪れることができた。流域散歩のおかげである。
