2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月13日

 イランの核開発問題についての交渉の障害は、今回もネタニヤフ・イスラエル首相である。しかし、同首相の頑なな態度は、サウジアラビアや他の湾岸アラブ諸国から支持されていない。

 イランは、金儲けにいそしんでいる野卑な宗教指導者達と腐敗した軍高官により運営されており、彼等は数カ月以内に核武装できる状況に止まり続けることで金を儲けた方が良いと考えているというのが現実だ。従って、彼等は、核武装によりこの世の終わりとなる大災厄ではなく、制裁解除を望んでいる。

 このような連中と友達になるためでなく、何世代にもわたり戦争と恐怖が続いている中東に核武装の連鎖を起こす危険を除去するための合意が必要だ。トランプ大統領は、ネタニヤフ首相を無視し、ワシントンの反対派を抑えてこの機会を掴むという希有な立場にいる。

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イランは相当弱っている

 まず、イランの腐敗した体制が核武装するよりも潜在的核(兵器)保有国であり続けることにより利益を得ることを望んでいるとのザカリアの指摘は正しい。それ相当の科学技術力があるイランが何十年経っても核武装できないというのは不自然だ。やはり、そのこと自体に利益を見いだしているのだろう。

 つまり、潜在的核保有国でいることは、現在のイラン革命体制の関係者にとり政治的、経済的なメリットをもたらしている。政治的には中東の覇権国家になりたいイランにとり、周辺諸国に対して睨みを利かせる手段となる(面子)。

 経済的には核開発には莫大な資金が費やされているのは間違いなく、その資金の多くが関係者の懐に入っているのであろう(実利)。そして、イランの貿易の大部分は革命防衛隊が仕切っており、制裁解除は革命防衛隊を潤すだろう。

 しかし、現在、米国はイランに対して完全な核開発の放棄(これをリビア方式とも言う)を求めているが、イランの革命体制は、制裁解除で多少潤っても、面子の上でも実利の上でも呑めないと考える。


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