2025年11月16日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月31日

 ワシントンポスト紙コラムニストのザカリアが、10月9日付けの論説‘Five realities about the new Middle East’において、ガザ停戦は中東の政治状況が追い風となって成立したが、永続的な平和の実現は関係勢力や関係国が二国家解決案を受け入れるかどうかにかかっていると、中東の5つの現実を挙げて論じている。

(AP/アフロ)

 ドナルド・トランプはしばしば「取引する大統領」と呼ばれるが、ガザ停戦合意は彼のそうした面が成功につながった。合意はまだ第一段階であり、関係者が約束を破れば破綻するか行き詰る可能性があるが、チャンスとして試す価値は十分ある。またそこには今日の中東に関する5つの重要な現実が表れている。

 第1の現実は、イスラエルが圧倒的に強い立場にあるということだ。今回のディールはイスラエルの案、あるいは少なくともイスラエルが許容できる米国の案だった。

 第2に、イスラエルから譲歩を得ることはできるが、それには政治的資本と手腕が必要だ。トランプは両方を賢く使ってネタニヤフ首相にディールを受け入れさせた。

 トランプはイスラエルの人々に強く支持されており、イスラエルがドーハにいたハマス幹部を殺害した地域で強い逆風を浴びると、トランプはこの支持を利用してネタニヤフに圧力をかけたのだ。そして、ハマスによる停戦案の部分的受け入れを全面的受け入れのように装って、強引にディールを成立させた。

 第3に、今回の交渉の中に新しい中東の現実を見ることができる。交渉には、ハマスと共にエジプト、イスラエル、カタール、米国が参加した。新しい中東で支配的なのはイスラエルと湾岸諸国で、中でも目覚ましいのが小国カタールだ。

 人口はわずか40万だが、イランやハマスも含めてあらゆる関係者との協議を厭わない鋭敏な指導者のおかげで紛争調停に欠かせない存在になった。エジプトなど古い中東が汎アラブ主義を掲げ、パレスチナのテロを推す大国に主導されたのに対し、湾岸諸国は近代化、技術的進歩、そして何よりも平和と安定を求める。


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