2025年12月8日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年10月31日

 第4に、新しい中東は、1979年のイスラム革命以来のイランの脅威が大きく減じている

 最後に、暴力、過激主義、そして強い敵意の存在にも関わらず、二国家解決で終わらない長期的プランというものは現実にはない。米国の外交官、マーティン・インディクは亡くなる数カ月前の昨年、Foreign Affairsに“The Strange Resurrection of the Two-State Solution”と題する論文を発表、二国家案は何十年も見捨てられてきたが、結局これに代わるものはないことを証明したと主張した。占領の継続、一国家、追放等々は全て上手く行かず、結局関係者は嫌々ながらも二国家案に戻ってきたと言う。

 これが起きるのは、トランプ自身が二国家案に辿り着き、同案にパワーとエネルギーを注ぎ込んだ場合に限られる。トランプが「本物の永続する平和」を達成できれば、ノーベル平和賞以上の賞に価し、歴史を通して響き渡るだろう。

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「瓢箪から駒が出た」第1段階停戦

 このザカリアの論説は、今後の中東情勢を見ていくうえで有用な視点を提示していると思われるので、紹介した。

 イスラエルが交渉仲介役の米軍基地のあるカタールのドーハにいるハマス幹部を攻撃したあと、同じくワシントンポスト紙のイグネイシャスは、ガザ紛争の交渉による解決の道をイスラエルは閉ざしてしまったとの論説を書いたが、イスラエルのこの攻撃を強く批判したトランプの取引外交によりガザ戦争の交渉による解決の可能性がここに出てきている。「瓢箪から駒が出た」ということであろう。


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