2025年12月5日(金)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2025年10月14日

 ドイツなど欧州諸国では、ガザ戦争の影響で反ユダヤ主義が強まっている。「ユダヤ人お断り」の貼り紙も現れた。ドイツ政府はネタニヤフ政権のガザ政策を批判する一方で、ユダヤ人差別を厳しく糾弾する。

(DiegoPH/gettyimages)

 今年9月17日に、ドイツ北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の地元新聞が掲載した記事は、多くの市民に衝撃を与えた。

 同州のフレンスブルクという町のある商店がショーウインドウに「ユダヤ人がこの店に入ることを禁止する」という紙を貼ったのだ。貼り紙には、「これはユダヤ人に対する個人的な恨みや、反ユダヤ主義とは関係ない。しかし私は、ユダヤ人たちに我慢がならない」と書かれている。

 商店主は警察官に注意されたため貼り紙を撤去したが、地元メディアに対して「私はイスラエルのガザ攻撃について怒っている。貼り紙は個人的な見解を表明したもので、反ユダヤ主義とは関係ない」と弁解した。だが検察庁は、ユダヤ人に対する誹謗中傷や、ナチス擁護などを禁止する国民扇動罪違反の疑いで捜査している。

 9月24日には南部のバイエルン州のフュルトで、レストランを経営するイタリア人が「イスラエル人が私のレストランに入ることはお断りだ。イスラエル人が目と心を開けば、再び喜んで迎え入れる」と書いた貼り紙をショーウインドウに掲示した。現地のイスラエル人団体は、この店主を国民扇動罪で告発した。

 ドイツ連邦政府でユダヤ人保護と反ユダヤ主義対策を担当するフェリックス・クライン対策官は、「これらのケースは、露骨な反ユダヤ主義だ。ナチス時代と共通するものがあり、絶対に許容できない」と強く糾弾した。

 カリン・プリーン連邦教育大臣も、「反ユダヤ主義的な発言をしたり、弁護したりする者は、民主社会を破壊しようとする者だ。捜査当局には厳しい対応を望む」と発言した。


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