2025年夏の参院選以来、日本社会で排外主義が声量を増している。1年ぶりの自民党総裁選でも、一部候補が国内の外国人を問題化し、争点の一つとした。
排外主義の政治主張は先進各国でもなされ、社会分断の要因の一つとなっている。移民流出入の長い歴史を持つ欧州の国々では、外国人排斥論は何十年と、形を変えて燻り続けている宿痾だ。
極右政党はことあるごとに過激な煽動を繰り返し、そこから生じる社会不安を政争の具にする。一方、人手不足が慢性化している分野、特に建設や医療福祉、宿泊飲食業では、外国人労働者がその維持を支えている、との認識が共有されてもいる。
筆者が住むフランスも例外ではなく、排外主義は社会問題の一つである。24年夏の国民議会(日本の衆議院に相当)の解散総選挙では、移民排斥を掲げる極右政党が伸長したが、左派の歴史的大連合により、政権奪取はからくも阻止された。それ以降も移民をめぐる厳しい政治的主張は続いているが、同時に、関連のデータとファクトを用い、より高い解像度で現状分析する言説も増えた。
フランス国立経済統計学研究所Inseeは24年夏、国内の外国人の就業率と失業率を国籍別に公表した。平均して7割の外国人は就業中もしくは就学・職業訓練中であり、約2〜3割が年金受給者。その失業率がフランス平均より低い国籍もあり、最も失業率の高い出身国でも、その割合は14%ほどであると示した。
同年秋にフランス公共放送局は、人手不足と外国人労働者の現実を、雇用主側からルポ。地方部のとある就職斡旋イベントでは、失業手当受給者6700人に招待状を送ったが、招待に答えた求職者は15人、うちフランス国籍者は1人のみで、「フランス人を雇えと言われても雇えない」現状を報じた。25年5月にはシンクタンク「テラ・ノヴァ」が、産業別の外国人労働者率や社会保障制度への貢献度を明らかにした報告書を発表、移民に対して国民が抱く悪いイメージと現実との乖離に警鐘を鳴らし、メディアに多く取り上げられている。
そして統計やメディアの外、実際のフランス社会では、国籍や出自の様々な労働者がフランス人と並んで勤めて、日常的に共生している。男性は建設、女性は医療福祉と、人手不足の深刻な職域で多くが働き、税金と社会保険料を支払っている。その姿は、メディアに満ちる単純な煽り文句よりも確かに、外国人労働者のいる社会の実相を示すものだ。
筆者は今回、フランスで働く外国人保育士・看護師に話を聞いた。母国で生まれ育ち働いた経験を持ちながら、いわゆる「外国人エッセンシャルワーカー」として、移り住んだ先の社会に寄与する人々だ。二人とも、結婚を機にフランスへ居を移した日本人である。
