2025年12月5日(金)

Wedge OPINION

2025年10月2日

 日本企業の中南米進出が重要な一方で、我が国の現状はどうか。日本は1990年の出入国管理及び難民認定法(入管法)改正以降、外国人労働者を急速に受け入れてきた。だが、彼らが日本で暮らしていけるための支援は十分とは言えない。日本に求められることは何か――。子女教育の現場と日系移民の歴史から考える。

日本語能力試験「N1」に合格したムンド校の生徒4人(写真左からシウバ・ナガノ・ガブリエラ・アユミさん、カトウ・ピアンコ・ヒアノ・エリアスさん、デ・アンドラデ・ルアナさん、カイヤ・チアゴ・リュウジさん)と松本雅美校長(WEDGE以下同)

 「防衛大学校に進学して、国を守る仕事がしたい」

 「外科医になるために、日本の大学の医学部を目指している」

 そう語ってくれた高校生たちの目は、生き生きとしていた。

 8月28日午前8時20分。浜松市のJR舞阪駅で降車し、浜名湖から吹く湖風を浴びながら北東に歩くこと約15分。浜松市外国人学習支援センターの建屋が見えてきた。

 今回、小誌取材班が訪れたのは、その建屋の2階にある「ムンド・デ・アレグリア校(以下、ムンド校)」。南米日系人の子どもたちが通う学校法人で、その名前はスペイン語で「歓びの世界」を意味する。

 ムンド校で日本語コーディネーターを務める岡則子氏の案内で2階の廊下を進むと、早速、授業中の生徒たちの姿が見えた。

 廊下から一人の生徒と目が合い、「小学校低学年くらいだろうか」と思った矢先、驚くことに、その子を含めた教室中の生徒が全員起立して、「おはようございます!」とお辞儀しながらにこやかに声をかけてきたのである。

 「日本人の多くは、流暢な日本語を話すよりも、日本の習慣や文化を理解していることを外国人に期待する傾向がある。ただ、そうしたことは誰も教えてくれない。あいさつは日本人の習慣の基礎。だからこそ本校では自然とそれができるよう、教育している」(岡さん)

教師のもとへ駆け寄りノートを見せる小学2年の生徒

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