2024年12月23日(月)

WEDGE REPORT

2023年10月20日

シンポジウム登壇者の集合写真。ハンマーを持っている4人のうち、左から2人目の白髪が陳建仁・行政院長(主催者提供)

 9月6日と7日、台湾・台北市で「人身売買防止のための国際ワークショップ」と題した会議が開かれた。台湾政府の主催で2009年から毎年開かれ、今年で15回目を迎えた会議である。ワークショップには台湾の行政関係者や研究者に加え、海外からも筆者を含め約20人が招待された。冒頭では、陳建仁・行政院長(首相)がスピーチを行うなど、まさに政府を挙げての行事だった。

 人身売買のターゲットが「外国人労働者」であることは世界的に共通する。ただし、台湾がその舞台となっているイメージは薄い。米国務省が世界各国を調査し毎年発表する「人身取引報告書」でも、台湾は14年連続で最高ランク(Tier 1=第1階層)の評価を得ている。

 今年の「第1階層」は欧米諸国を中心に計30で、日本は長らく1ランク下の第2階層に甘んじている。日本と台湾は外国人労働者の誘致をめぐってライバル関係にあるが、その台湾の方が外国人の人権に関して評価が高い。いったい何が違うのか。

 まず、台湾の外国人労働者受け入れ状況に少し触れておこう。

 日本と同様、台湾も人手不足の影響で外国人労働者が増加し続けている。日本の厚生労働省に当たる台湾労働部によれば、「移工」と呼ばれるブルーカラーの外国人労働者の数は2023年8月末時点で74万5696人に上り、2010年前後の40万人程度から大きく増えている。コロナ禍の影響が残っていた昨年6月との比較でも、6万人近い増加である。

 最も多くの外国人が働いているのが「製造業」で、全体の64・1%を占める。続いて「介護」が30・6%だ。台湾の人手不足は農業や建設業でも深刻だが、政府は外国人労働者の受け入れ数を制限している。そのため農業など第1次産業で働く外国人は0・5%(4010人)、建設業も2・9%(2万1255人)と多くない。

 一方、日本の外国人労働者は昨年11月時点で約182万人(厚労省「外国人雇用状況」より)だ。ただし、この数字はホワイトカラーの専門職も含んでいて、ブルーカラーの仕事に就いている外国人は実習生や留学生アルバイト、日系人などを中心に130万〜140万人と見られる。台湾の2倍近い数だが、人口規模を考慮すれば、製造業や介護分野での外国人頼みは台湾の方がずっと著しい。

 台湾の外国人労働者の国籍は、インドネシアの26万4391人とベトナムの26万778人がトップを争っている。インドネシア人は女性の介護士、ベトナム人では製造業で働く男性が多い。両国に15万2124人のフィリピン、6万8400人のタイを加えた計4カ国で、外国人労働者のほぼ100%となる。台湾は日本のように多くの国から出稼ぎ労働者を受け入れているわけではない。

 では、台湾の外国人労働者の人権は、日本よりも守られているのか。米国務省が日本を「第2階層」とする大きな要因が「外国人技能実習制度」である。実習生に職場を変わる「転籍」の自由がないと批判する。


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