2024年6月17日(月)

WEDGE REPORT

2023年10月20日

留学の裏ワザ”

 すると政府は“裏ワザ”を使い始める。留学ビザ取得に必要な経済力を有さないアジア新興国出身者までも、「留学生」として受け入れていくのだ。ビザ申請時に留学希望者が提出する書類が捏造されたもので、「留学」の目的が勉強よりも出稼ぎだとわかってのことである。

 留学生が増えれば、日本語学校を始めとする教育業界は潤う。目的が出稼ぎであろうと、産業界は彼らを低賃金の留学生アルバイトとして利用できる。そうした業界の意も受け、政府はベトナムなどから出稼ぎ目的の偽装留学生を大量に受け入れた。結果、30万人計画も20年を待たず達成される。

 台湾も日本を真似て偽装留学生を受け入れ、留学生を水増しする道もある。だが、台湾にその気はない。

 蔡英文政権は、2030年までに留学生を現在の約3倍の32万人まで増やす方針を打ち出している。ターゲットに掲げるのが、ベトナム、インドネシア、フィリピンなど台湾に労働者を送り出す国の若者たちだ。ただし、日本の偽装留学生のように留学費用を借金させて受け入れ、底辺労働に利用しようとはしていない。大学卒業後に一定期間、台湾で就労することを条件に、学費や生活費を支援するのだという。そのための予算として24年からの5年間に52億台湾元(約240億円)を投入することが、ワークショップが開かれていた最中の9月7日に閣議決定されている。

 日本の偽装留学生は、借金返済に加え、翌年分の学費を貯めるため、留学生に許される「週28時間」を超えて働くしかない。その挙げ句、学校から逃げたり、中には手っ取り早く稼ごうと犯罪に走る者が現れる。そんな日本の状況を、台湾は反面教師としたのだろう。だから<営利目的の大学>の不正にも厳しい措置を取る。

 ワークショップに登壇した各国の専門家から、何度も聞かれた英語のフレーズがあった。

 「Debt bondage」

 日本語に直せば「借金づけ」である。「借金づけにした挙げ句、その返済のために強制的に働かせる」のが人身売買の典型的な手法だ。だとすれば、日本の多くの実習生、また偽装留学生も「人身売買」の犠牲者に他ならない。ベトナムなどの実習生は母国の送り出し業者に支払う手数料を借金でまかない、来日後に働いて返済していく。日本語学校の学費を借金して来日する偽装留学生にしろ同じである。

 台湾の外国人労働者にも、借金を背負って入国する者はいる。外国人の就労環境にしろ、失踪の多さからして問題があることは否めない。しかし台湾は問題解決に受け、政府一丸となって取り組もうとしている。そしてワークショップのような場を設け、自らの姿勢を海外に向けてアピールする努力も欠かさない。

 ワークショップには、インドネシアやフィリピンの政府高官も登壇した。会場には米国務省関係者も姿を見せていた。さらには、こんな場面もあった。壇上に並んだ台灣政府の高官らが、司会者の「人身売買、撲滅!」という声に合わせて一斉に模型のハンマーを振り下ろしてみせるのだ。「パフォーマンス」と言えばそれまでだが、その様子は会議のハイライトとして、現地メディアを通じて世界へと発信された。

 翻って日本はどうか。実習生や留学生の数確保を何より優先し、借金問題ひとつ取っても長年放置し続けている。台湾に学ぶべき点は少なくない。

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