2024年12月7日(土)

Wedge REPORT

2023年3月25日

 地方議員で最も“格上”とみなされるのが都道府県議会議員だ。報酬は市区町村議よりも高く、市議などからのステップアップを目指す人も多い。しかし、都道府県議の実態は市議らにも増して見えにくい。

 得体不明なことも影響してか、都道府県議選の投票率は地方選の中で最も低い。そして選挙が無投票となるケースも多い。『朝日新聞』(3月4日電子版)によれば、前回2019年の統一地方選以降以降の都道府県議選では、全1090選挙区の37・3パーセント(407選挙区)が無投票だった。4割近い選挙が無投票というのは、明らかに異常だ。無投票で当選した都道府県議の割合も定数の25・5パーセントに上り、議員のなり手不足が叫ばれる町村議のの23・1パーセントよりも高い。

(JuliarStudio/gettyimages)

最も楽だった県議選

「私は県議、市議、市長と3つのタイプの選挙を経験しましたが、最も楽に選挙をしたのが県議選でした」

 そう話すのは、元兵庫県議の伊藤順一さん(60)だ。伊藤さんは2007年の県議選に民主党公認候補として地元・宝塚市の選挙区で出馬し、当選を果たす。

「初めての選挙だったので一生懸命に選挙運動をやっていたら、周囲の人から『民主党なんだから、そんなにがんばらんでも当選できる』と。確かに、終わってみれば、民主党への追い風のおかげでトップ当選しました」

 当時、民主党は政権交代に向けて全国的に勢力を拡大しつつあった。その勢いに乗り、伊藤さんも定数3の選挙区で、最多の票を獲得した。当選した他の2人は自民党と共産党の公認候補で、3人の無所属候補は揃って落選だった。

 伊藤さんの体験が象徴するように、都道府県議選には「政党選択」の意味合いが強い。だから政党も、とりわけ力を注ぐ。選挙結果に民意が反映され、次の国政選挙への影響も大きいと考えるからだ。

 現在の政党支持率を比較すると、全国的には自民党が他党を圧倒している。ただし、大阪などでは、日本維新の会に自民を凌ぐ強さがある。そうした地域事情はあるにせよ、都道府県議選では、大政党の公認を得れば当選の確率が高まる。そして、ひとたび獲得した議席を維持しやすいのも特徴と言える。

 市区町村議選の場合、政治経験のない人の立候補も多い。だが、都道府県議選になると、市議や国会議員の秘書経験者らの出馬が目立つ。当選のカギとなる政党公認を得るには、政治経験や国会議員とのコネクションがあった方が有利なのである。


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