2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2023年3月25日

道州制の議論はどこに行った?

 前出・伊藤さんが言う。

「県議など必要ない、市議と国会議員だけでいいのではないか、という人もいます。しかし、県議の必要性を論じるには、まず県の役割を定義し直す必要がある。以前には、道州制の導入に向けた議論が盛り上がったこともあった。県の役割を考えるきっかけになると私も期待しましたが、その議論も今はほとんど聞かれません」

 道州制とは、北海道以外の都府県を廃止し、全国をいくつかの州に分ける制度だ。地方分権を唱える人たちが主張していたが、いつの間にか議論は立ち消えとなった。

 道州制が実現すれば、県議は必要なくなる。当然、県議たちは自らの仕事を守ろうと反対する。一方、道州制導入に向けた法律改正を担う立場の国会議員も、県議たちの声は無視できない。地元の県議には、自らの選挙などで世話になっているからだ。

 今回の取材で会った元地方議員の中に、こんな話をしてくれた人がいた。

「改革は既得権益にメスを入れることになり、大きなエネルギーが必要です。今の日本には、そのエネルギーがない。改革によってより悪くなることを恐れる空気が充満している」

 道州制の議論ひとつ取っても、確かに元議員の言う通りなのだろう。

 しかも世論は、地方議会への関心が薄い。だから尚さら、改革の機運など出ない。その象徴が都道府県議会と言えるのかもしれない。東京都の127人を筆頭に、定数が100人を超える議会もいくつかあるが、それほどの議員が本当に必要なのか。

 いくら投票率が低かろうと、また選挙が無投票になろうとも、決まった数の議員は選ばれ、大きな権限と高額な報酬を手にする。むしろ選挙など盛り上がらず、世間に「見えない」存在でいる方が、彼らにとっては好都合なのだ。そんな現状も、私たち自身の無関心が招いている。

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 あなたはご存じだろうか。自分の住む地方議会の議員の顔を、名前を、どんな仕事をしているのかを─。住民の関心は高まらず、投票率の低下や議員のなり手不足は年々深刻化している。地方議会とは一体、誰のために、何のためにあるのか。4月に統一地方選挙を控える今だからこそ、その意義を再考したい。 

   
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