2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2023年3月25日

県議の仕事の中身とは?

 では、議員としての実際の仕事の中身はどうなのか。県議と市議の両方を経験した人に尋ねると、「市議の方がずっと忙しい」と口を揃える。また、県議出身の国会議員を取材しても、「国会議員の忙しさと比べたら、県議の頃は時間があった」との声が聞かれた。県議を務めた後、市議となった伊藤さんはこう話す。

「市議になって驚いたのは、年4回の議会で毎回、質問の順番が回ってくること。県議の場合は、1年に1度あるかどうか。もちろん、質問の機会が少なくとも、法律のことなど勉強することはいくらでもある。でも、勉強しなくても議員が務まるのも事実です」

 市議などと同様、県議にも行政のチェックという役割がある。だが、自らの政党が支持する知事であれば、政策に異を唱えにくい。しかも知事には、与野党の相乗りで選ばれているケースが多い。

 一方、有権者とっては、都道府県議という存在は縁遠い。住民による陳情にしろ、市議を飛び越えいきなり県議に寄せられることは珍しい。議会で質問する機会も少なく、陳情の対応に追われることもないのであれば、県議たちは普段、何をやっているのか。元県議の1人はこう話す。
「県議の仕事は、半分以上が“党務”です。県外を含め選挙があれば応援に出かけ、演説に立ったりする。もちろん、選挙は常にあるわけでもない。正直、時間は余るほどありました」

 この元県議は、議員時代には期末手当を含めて年1500万円近い報酬を得ていた。加えて支給される月45万円の政務活動費で、事務所を借りてスタッフを雇うこともできたという。ひとたび当選すれば安泰の議席、また仕事の忙しさや報酬などの待遇も、市議などよりずっと恵まれているように映る。

 都道府県議には、国政への進出を狙う人もいる。その一方、県議の座に長く留まり、大きな権力を握る古参もいる。とりわけ、現在の政界で「1強」を謳歌するの自民党内では、有力県議と地元選出の国会議員の間で権力闘争が起きることもあるという。県議の実態を間近で見ている現職市議はこう述べる。

「最近の知事選や市長選では、保守系の候補同士が争うことがよくある。そんなことが起きる背景の1つが、県議と国会議員の権力闘争です。県議が自ら操れる首長をつくろうとして、国会議員が推す候補とは別の人を出馬させたりする。長年議員を務めている県議には、若手の国会議員より力のある人がいます」

 政治の根本は「権力闘争」に他ならない。とはいえ、有権者そっちのけ争いは、決して褒められたことではない。


新着記事

»もっと見る