2024年4月17日(水)

Wedge REPORT

2023年3月24日

 近年、統一地方選の投票率は低下する一方だ。1987年には90パーセントを超えていた町村議選の投票率は、前回2019年には60パーセントを割り込んだ。市議選の投票率で70パーセントから46パーセント、都道府県議選も67パーセントから44パーセントへと下がっている。

 地方議会の実態は、国会と比べて見えにくい。動向がメディアで報じられることも少なく、議員たちが何をやっているのかもよくわからない。これでは選挙への関心が低くなって当然だ。地方議員とは、いかに選ばれ、どんな仕事をしているのか。

県議と市議の違いとは?

(ururu/gettyimages)

 まず、都道府県議と市区町村議では、政党との関係に大きな違いがある。都道府県議の場合、約8割の議員が政党に所属している。総務省の調査によれば、2021年末時点で最も多いのが自民党の48・5パーセント(2598人中1261人)でで、公明党の7・6パーセント(197人)、共産党の5・4パーセント(140人)が続く。

 一方、市区議の6割近くは無所属だ。都道府県議では半数近い自民党議員の割合が11パーセントと大きく落ち、公明党の12パーセントよりも少ない。そして町村議に至っては9割以上が無所属で、自民党議員は1パーセントに過ぎない。実際には自民党と関係が強くても、無所属で活動しているわけだ。

 選挙に関する違いもある。都道府県議選の場合、市や町、地域ごとに選挙区が設定される。そして定数1の「1人区」もあれば、10人以上が当選する選挙区もある。それが市区町村議選になると、政令指定都市を除き、1つの選挙区で議席が争われる。定数も数十人に達するケースが多い。そのため候補者は、選挙区全体から幅広く得票する必要はない。特定の政党や労働組合などの組織票、また候補者が地元とする地区の票などを固めれば当選は可能だ。だから「保守系無所属」の市議らには、地区代表の性格が強くなる。

 住民との距離は、市区町村議の方がずっと近い。兵庫県議を経て、地元の宝塚市で2011年から17年まで市議を務めた経験のある伊藤順一さん(60)はこう話す。

「県議の顔を知っている人はそんなにいません。その点、市議は身近な存在と言える。私が市議だった頃は、移動は電車を避け、必ず車を使っていた。電車を使えば、駅まで向かう間に何人もの人に呼び止められ、頼みごとの相談を受けてしまう。話を聞いているうち、約束の時間に間に合わなくなることがよくあったんです」

 もともと伊藤さんは宝塚内でガソリンスタンドを経営する傍ら、若手経営者の集まりである青年会議所(JC)の地元トップを務めるなどして顔が広かった。そんな伊藤さんが市議になったことで、「頼みごとの相談」が相次いだのだ。

 もちろん、住民の声を聞き、行政に反映させるのは市議の仕事ではある。だが、中には個人的な頼みごとをしてくるような人もいる。現職市議の男性(40代)はこう話す。

「市内の若者たちから『スケートパークをつくってほしい』との相談があり、私が議会で取り上げた。その後、建設に向けて動き始めています。こうした陳情は公共の利益になりますから大歓迎。でも、(自分で申請しても認められなかった)生活保護の申請をしてくれとか、自分の家の前に横断歩道をつくってくれといった、公共の利益とは関係ない相談も多いんです」

 議員に頼んだところで、すべて実現するわけではない。それでも支援者から相談があれば、議員は何かしら対応する。政党に限らず、様々な組織が議員を出したがるのはそのためだ。行政への問い合わせなどがある際、身内の市議に“御用聞き”を頼めるわけである。

「地区代表」の議員にしろ、同じことが言える。近所に市議がいれば、頼みごとがしやすい。しかし、本来、議員の仕事は行政を監視することであって、支援者の“御用聞き”ではないはずだ。行政に頼みごとがあれば、議員など通さず、住民が自ら担当の部署に連絡すればよい。住民が伝えても通らない相談が、議員の口利きで実現するのであれば、それこそ問題なのだ。


新着記事

»もっと見る