2025年12月5日(金)

Wedge OPINION

2025年10月1日

 今年3月のルラ・ブラジル大統領の訪日は国賓待遇となった。これは2019年のトランプ米大統領以来のことだった。

世界屈指の資源国・ブラジルで、日本企業はいかにビジネスの可能性を拓けるか(JEREMY WALKER/GETTYIMAGES)

 その背景には25年が日本とブラジルとの外交関係樹立130周年という節目の年であったことがある。ただし、同国の存在感を抜きに今回の待遇は考えられない。中庸な外交戦略を展開し、グローバルサウスの代表格であるブラジルは、分断が進む世界において独自の立ち位置を確立している。今年は国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)開催国として環境外交も主導する。

 産業面では、鉄鉱石以外に、マンガン、銅、レアアースなど次世代に有用な鉱物資源や、畜産・養殖飼料として世界の食を支える大豆やトウモロコシなどの食料資源で世界随一の輸出余力を誇る。政治面では世界的にリスクが広がる中、内戦や民族紛争もなく、資本主義と民主主義を堅持している国でもある。

 さらに、世界7位を誇る人口2億1000万人のうち、270万人の日系人はブラジル社会で高い信頼を得ており、極めて親日的だ。こうしたことから、幅広く・深い関係を構築すべきパートナー国の首脳としてルラ大統領を国賓待遇で招くことについては極めて納得感が高い。

 今回のルラ大統領招へい以外にも、外交面では高いレベルで相互交流の実績が蓄積されている。他方で、経済・ビジネス交流は盛んであるとは言い難い。国際協力銀行(JBIC)による24年の日本の製造業を対象とした海外進出アンケート調査によると、中期的有望事業展開先国・地域としてブラジルは4.8%(国別11位)にとどまっている。


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