さらに、サウジアラビアは、米国の他の大国との争いでも米国に協力しており、例えば米国が中国に依存している重要な鉱物資源を米国に供給したいとしている。
ムハンマド皇太子は、何故、イスラエルと国交正常化するアブラハム合意参加への熱意を失ったのか?23年、バイデン前大統領はイスラエルとサウジアラビアの国交正常化の間近まで漕ぎ着けていたが、ガザの衝突が始まると国交正常化は凍結されてしまった。トランプ政権は、サウジアラビアがイスラエルと国交を樹立すれば他のアラブ諸国とイスラム諸国がそれに続くと期待している。
しかし、トランプ大統領は国交正常化を慫慂(しょうよう)したが、ムハンマド皇太子は、イスラエルとパレスチナの二国家解決への明確な道筋がなければならないと答えた。その一方で、サウジアラビアは、イスラエルとの関係を深めている。
サウジアラビアは、トランプ大統領は、任期の後半に国交正常化についてムハンマド皇太子への圧力を強めるのではないかと懸念している。例えば、F-35の供与と絡めるかもしれない。
今のところ、トランプ大統領は我慢しており、サウジアラビアとしては、今や米・サウジ関係はイスラエルを承認するかどうか次第ではなくなったので、急ぐ必要はないのである。
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日米安保条約の信頼を損なう可能性も
ムハンマド・サウジアラビア皇太子の訪米は成功だったと喧伝されているが、その詳細はいまだ不明だ。しかし、この記事によれば、数々の成果もこれから詳細を詰めなければならないようで、いつものことだがトランプ大統領は大風呂敷を広げるが、結局、羊頭狗肉に終わってしまう可能性が高い。
この記事では触れられていないが、訪米の成果で日本に大きな影響があり得るのは、米・サウジアラビア戦略協定の署名だ。詳細は明らかにされていないが、日米安保に近い形だと伝えられている。
バイデン政権時にも日米安保条約が雛形の安全保障協定をサウジアラビアに提案した前例があり、その際、サウジアラビア防衛を米国が担うことに対して議会関係者の強い反対があり、バイデン政権関係者は、「米軍の軍事介入はコミットされていない」と説明した経緯がある。
