ロシア軍がウクライナ侵攻で、前線の占領地を拡大しているとの情報が繰り返しもたらされている。ただ、俯瞰すれば戦争は決定的な局面を迎えないまま3年半近くが経とうとしているのが実情で、ロシア軍はウクライナの最大の支援国だった米国が支援に否定的な姿勢を示しているにもかかわらず、決定打を打てていない。

(Makhbubakhon Ismatova/gettyimages・AP/アフロ)
一方でウクライナ軍は6月1日、ドローンを使った大規模攻撃で、ロシア国内の複数の軍用飛行場でロシア空軍に大打撃を与える「蜘蛛の巣作戦」に成功するなど、ロシア軍のもろさともいえる状況も浮かびあがっている。
5月に来日した欧州高官は、日本側に「決して、ロシアが戦況を優位に進めているとの情報だけに耳を傾けてはならない」と警告して、ロシア軍をめぐる状況は決して容易ではないと伝えたという。事実、ロシア軍の死傷者数は80万~100万人規模に達していると推計されている。ウクライナ戦争が、第二次世界大戦以降でロシアに最大の損害を与えているのは事実で、兵器の損失も著しい。
ロシアは、強大な国力を十分に生かすことができず、膨大な損失を被りながら、戦争を続けている実態が浮かび上がってくる。
「信じるな」
「われわれの情報機関が得ている情報によれば、ロシアは決して戦闘で優位に立ってはいない。日本は、決してそのような情報に振り回されないでほしい」
5月下旬に訪日した欧州政府高官は、日本の関連機関にそう強調したという。高官の発言は、対ウクライナ支援で日本の協力を得たい思惑があった部分も否定できないが、その言葉には確信が込められていたという。