2025年7月13日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月16日

 2025年6月1日付のワシントン・ポスト紙は、6 月1日のウクライナによるロシアへのドローン攻撃が、はるかウラル以東の空軍基地の戦略爆撃機を破壊する等の成果を上げたことを紹介し、今日ドローンの登場によって戦争の様相が大きく変わりつつあるとする解説記事を掲載している。

ウクライナの「蜘蛛の巣作戦」によって破壊されたロシアの軍用機(2025 Planet Labs PBC/ロイター/アフロ)

 ウクライナ軍は6月1日、再び戦争のルールを書き換えた。ウクライナ情報機関は、トラック輸送で大量の無人機をロシアの奥深くに潜入させ、遠隔操作で発射することに成功した。

 ゼレンスキー大統領は、「蜘蛛の巣」と称するこの作戦により、ロシアがウクライナへの長距離巡航ミサイル攻撃に使用していた爆撃機の3分の1が破壊または無力化されたと主張している。報じられているところによると、被弾したロシア機の中には、Tu-95爆撃機とTu-22爆撃機、そしてアメリカのAWACSに似た A-50 早期警戒管制機が含まれていた。

 ロシアの軍事ブロガーが、今般の攻撃を真珠湾攻撃と比較したのも無理はない。ただし、真珠湾攻撃が新たな戦争の始まりを告げたのに対し、ロシアの飛行場への攻撃は、ウクライナがプーチン大統領による侵略戦争から自国を守ろうとした試みの一つに過ぎず、この比喩は適切ではない。ただ、いずれの攻撃も、かつて優勢だった兵器システム、すなわち1941年は戦艦、今日は航空機の陳腐化を示唆する兆候かも知れないという点で、この比喩は意味があるのかもしれない。

 他方、ロシアのような警察国家において、ウクライナ軍が主要空軍基地の近くにドローンをこっそりと配備できたのであれば、中国が米軍基地で同じことをするのをどうして阻止できるだろうか。パキスタンはインド空軍基地で、北朝鮮は韓国空軍基地で、それぞれ阻止できるだろうか。

 電気柵と警備ポストで空軍基地を安全に守っていると思っていた軍隊は、今や安価でどこにでもあるドローンがもたらす空からの脅威に直面せざるを得なくなる。これは、対ドローン・システムへの巨額の投資を必要とするだろう。

 「蜘蛛の巣」作戦はロシア軍に決定的な打撃を与えることはないだろう。しかし今般の攻撃は、ロシアが本格的な侵攻を開始する前には誰も予想していなかったほど、ウクライナが強靭で適応能力のある戦闘員であることを証明しつつある。

 前線は依然として膠着状態にあり、ウクライナは人員不足を補うため、世界をリードするドローン産業の発展を目指している。ウクライナは昨年220万機のドローンを生産し、今年は450万機を目指しているという。今般の作戦が再び示したように、ロシアはドローン競争においてウクライナより常に一歩か二歩遅れをとってきた。


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