2025年7月13日(日)

プーチンのロシア

2025年6月27日

 前線においては、ロシア軍による占領地域の拡大のニュースが6月に入り繰り返しもたらされている。ロシア軍は新たにウクライナ東部ドニプロペトロウスク州にも進軍し、ハルキウ、スムイ州にも激しい攻撃をしかけている。16日には首都キーウでも大規模空爆が行われ、20人を超える犠牲が出た。

 ただ、ロシア軍が猛攻撃を仕掛けた背景には、ウクライナが6月に成功した蜘蛛の巣作戦への報復があることは確実だ。同作戦でウクライナ軍は北極海沿岸や東シベリアなども軍用飛行場を攻撃し、戦略爆撃機を含む約40機の航空戦力に損害をもたらしたという。

 米国にも事前通告しないなど、徹底した情報管理でロシア側に奇襲をかけた。その成功は、単にウクライナ軍の作戦遂行能力を証明しただけでなく、ロシア側が国内ですら容易に防御することができない実態を浮き彫りにした。

圧倒的な差

 ロシア軍は現在、ウクライナに対しどれほどの戦力を有しているのか。ドイツの調査会社「スタティスタ」が今年2月に発表した2025年時点の統計によれば、主要な項目だけでも、おおよそ以下のような差がある。

現役兵士 ウクライナ・・90万人 ロシア・・132万人

予備役兵士 ウクライナ・・120万人 ロシア・・200万人

戦闘機 ウクライナ・・70機 ロシア・・833機

ヘリコプター ウクライナ・・136機 ロシア・・1651機

戦車 ウクライナ・・1100両 ロシア・・5000両超

 数字を見る限り、依然として圧倒的な差がある。しかしそれでも、ロシア軍の前進のペースは限定的であり、戦争は泥沼化している。戦争開始当初のウクライナ北部戦線などでロシア軍の失敗は広く知られているが、ロシア軍がウクライナ軍を圧倒的できない背景には何があるのか。

政権への忠誠求められる軍幹部

 ロシア軍の現状について、米連邦議会は今年5月に詳細なリポートを発表した。リポートは、ロシア軍は甚大な兵士、装備の損失に直面する一方で、硬直的な指揮系統と未熟な兵士を利用しなくてはならない現状に直面しており、それが戦況の膠着状態を打開できない大きな要因になっていると指摘している。ただ、まだ当面は、現在の作戦のペースを維持できる状況にあると解説している。

 ソ連軍は強い中央集権型の指揮系統だったが、ロシア軍もその指揮系統は大きくは変化していないとされる。ロシア軍ではまた、戦果以上に政権幹部に対する忠誠心の強さも、上級士官の人事を左右するといわれる。ウクライナ侵攻開始以降、政権との問題が原因とみられる軍幹部の更迭などもみられ、大組織ゆえの弊害ともいえる実情が浮かび上がっている。


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