かつて「中古品」といえば、安かろう悪かろうのイメージが定着していた。リサイクルショップには家電や食器類が雑多に並べられ、バッタ屋のように近寄りがたい雰囲気があった。中古品は、出費を抑えたいときに仕方なく選ぶような類のものだった。
しかし、そんな認識も変化しつつある。古着の一部はヴィンテージ品として10万円以上の高値で売買され、古着ブームを巻き起こした。トレカもレア商品は高額で売買されている。希少品は、発売当初の価格より高値で売買されている。
ネットによる個人取引が中古品への抵抗感を低減させたと言われている。1999年に「Yahoo!オークション」がサービスを開始し、中古品の個人売買が普及。2013年にはフリマアプリ「メルカリ」が誕生し、スマホの普及と共にメルカリは利用者を増やした。不要なものはメルカリで売るという習慣が定着した。
内閣府によると中古車を除く中古販売額は2010年代まで1兆円規模だったが、22年には2.9兆円まで拡大した。別の調査では、30年までに4兆円に達する見込みだという。そして市場規模拡大に伴い、中古品売買を手がける大手企業の業績は伸び続けた。
古着で稼ぐゲオHD
「ゲオ」は2000年以降、CD・DVDのレンタルや中古のゲームソフト販売で事業を拡大した。TSUTAYAが強力なライバルだったが、個人店や零細企業を淘汰し全国に展開した。しかし現在のゲオHDの主力商材は古着だ。2025年3月期の決算資料によると、売上高4277億円のうち、「衣料・服飾雑貨」は1022億円で24%を占める。ゲームなどメディア系の売上高は837億円で、レンタルの売上高は僅か287億円だ。商材別の売上総利益では「衣料・服飾雑貨」が38%を占め、全商材の中ではダントツである。19年には中古の高級時計・ブランドバッグなどの卸売・オークションを手がける「おお蔵」を子会社化し、高額品の調達力を強化した。
古着の販売は「2nd STREET」が担う。ゲオHDは2010年にセカンドストリートを完全子会社化し、同業態を取得した。25年9月末時点で2nd STREETは国内906店舗を展開する。当初はロードサイド店が中心だったが、ゲオHDは都市部での出店を加速し、店舗数は10年間で倍増した。都市部への進出で知名度を上げ、それが売上増加につながる好循環をもたらしている。
都内では新宿・池袋・錦糸町など繁華街に出店し、丸井錦糸町店のように施設内に出店することもある。安い服もあるが、パタゴニアのダウンジャケットが2万円以上で販売されるなど、ブランド品も並ぶ。店ごとに商品が異なる点が魅力とされ、週末は掘り出し物を狙う若者で賑わう。2nd STREETの好調により、ゲオHDの売上高は19年度の3051億円から、24年度には4277億円まで拡大し、同社は急成長を遂げた。
ブックオフは本からトレカへ
ブックオフもゲオと同様、商材を切り替えて業績を伸ばした。店舗数は減少したものの、ブックオフグループHDの売上高は19年度の844億円から、24年度には1192億円となった。ただし注力したのは古着ではない。祖業の古本販売を縮小しながら、トレカやフィギュアなどのホビー系商材を増やした。商材別売上高は17年3月期から25年5月期までの間、書籍の割合が36%から23%に縮小した一方、「トレーディングカード・ホビー」は4.9%から21.9%に拡大した。
ホビー系商材の拡大はコロナ禍以降が著しく、21年5月期の売上高は前年比で2.7倍に拡大。特に22年5月期、23年5月期はともに同40%以上の伸び率を示した。海外では幻のポケモンカードが億円単位で売買されているように、近年のトレカ人気がブックオフにとって追い風となっている。
「池袋サンシャイン60通り店」は雑居ビルの2階と3階に店を構えており、2階はホビー系商材売場、3階が書籍売場という構造だ。2階では数千円台のフィギュアや、高い物で数万円単位のトレカを販売。3階よりも2階の方が人で賑わっている。他の店舗も同様、書籍よりもホビー系商材が主力である。カード対戦用の「デュエルスペース」を構える店舗もある。
ちなみに同社におけるアパレル販売の比率は10%強に留まり、変化していない。2018年には古着販売店「東京古着」の事業を譲渡するなど、古着事業の開拓はうまくいっていないようだ。
