2025年7月13日(日)

プーチンのロシア

2025年6月27日

 非効率な軍の運営を改善しようという動きもある。昨年5月には、プーチン政権はショイグ国防相を更迭し、元経済閣僚のベロウソフ氏が後継に抜擢された。

 このような動きは、戦争の長期化が鮮明になる中、戦費の拠出を効率化する狙いがあったとされる。ロシア軍は、そのような改革の動きと、硬直的な組織の運営が織り交ざりながら、戦争を続けているのが現状だ。

高額報酬で兵員を補填

 ロシア軍が直面する最大の課題は、異常ともいえる規模の兵員と軍装備の喪失だ。

 英国防省は6月、ロシア軍の死傷者数がほぼ100万人に達したと発表した。数字は発表する国で多少のずれはあるが、大きな変化はない。比較されることが多いソ連のアフガニスタン侵攻では、ソ連軍の死傷者は約6万5000人と推定されていて、その15倍に達していることになる。

 ロシアは人口規模が日本とほぼ同じだ。その日本と比較した場合、約100万人という政令指定都市と同等規模の人口が死傷したら、空前の事態だといえる。政権が持つことは考え難い。

 しかし、国内メディアへの統制やプロパガンダ、反政府勢力の芽をつぶす戦略で、ロシアは国内世論を反政権に向かないように仕向けているのが実情だ。

 現実問題として、ロシア軍はどのように損失した兵力を補充しているのか。プーチン大統領は2024年9月に、軍の現役兵士の人員数を150万人規模にするよう命じた。むやみに徴兵規模を拡大すれば国民の反発を招くのは必至で、そのような人員の穴を埋めているのが、金銭で入隊する契約兵だ。

 彼らに支払われる一時金はロシアの平均的な月収の20倍以上とされ、特に地方の貧困層の引き入れに効果を発揮している。また、通常の徴兵においても、徴兵忌避に対する罰則の強化や、除隊の条件を厳しくするなどして、現役兵の人員数の維持を図っているという。

経験不足の新兵ら

 ただ、人員規模を維持すれば、以前と同様の兵力を維持できるということではない。

 侵攻開始以前にあった、経験豊富な部隊や兵士らは、戦争により当然、減少する。その代わりに入るのが契約兵ならば、彼らは当然、経験不足などから兵力は落ちる。

 実際に、契約兵として軍に加入する人々は軍務経験がほとんどなかったり、60代など高齢の市民も少なくないという。生活に困窮する高齢者らが、高額の報酬につられて契約兵として入隊しているのが実情だ。


新着記事

»もっと見る